Fineからのメッセージ
もしあなたが、誰にも話せず、声も出せず、孤独でつらい思いをしているとしたら、同じ不妊や不育症を経験した仲間がFineにはたくさんいます。ぜひ声を聞かせてください。ぜひ私たちに会いにきてください。
2022年4月から保険適用になった不妊治療。子どもができにくい人にかぎらず、経済的・心理的負担から治療をためらっていた夫婦も、“子どもを持つ”ことに前向きになれるうれしいニュースでした(※1)。
しかし、いざ妊活に踏み込むと、クリニック選びに始まり、決めなければならないことや知っておくべき知識など膨大な情報量に、気が滅入りそうになることも。クリニックとの相性、お金の問題、仕事との両立、産む/産まないの選択……置かれている状況も悩みもさまざまで、納得できる道にたどり着く前に、心も体も疲弊してしまっている人もいるかもしれません。
不妊治療に並走してくれるのはクリニックだけに限りません。現在は、妊活・不妊治療を進める際の悩みに寄り添ってくれる支援団体がいくつも立ち上がっています。ここでは、信頼のおける団体のサービス内容や想いをご紹介。「なにが自分に合っているのかな……?」と妊活に漠然とした不安を抱えている人の手助けに、きっとなるはずです。
※1保険適用の条件や対象となる治療方法については、コラム「【不妊治療】2022年4月から保険適用に|適用条件やメリットについて解説」を参照ください。
プライベートな話題だからこそ近しい友人と語ることが難しいなかで、「Fine」は当事者同士が“不妊治療について気軽に話せる場”をいくつも提供している、業界で長く活動している団体です。当事者アンケートを実施して不妊白書を発行するなど、当事者以外の方への啓発活動も実施しながら、「不妊当事者が抱えている孤立感を解消したい」という思いのもと、オンラインのカウンセリングやイベントなど当事者間のコミュニティを提供しています。
「不妊・ピアカウンセリング」は、不妊治療を経験し、Fine認定の専門資格を取得した「不妊ピア・カウンセラー」(※2)による面接・電話カウンセリング。自身も流産や不育症など不妊に悩んだ当事者なので、医療的な側面からだけでなく、当事者の心に寄り添って親身に話を聞いてくれます。なんとなく不妊治療中の状況についてもやもやを抱えている方は、同じ悩みを抱える人とのおしゃべり会、「Fineトパーズ」「Fineマナティー・クラブ」がおすすめ。話すことで、不安のもとが明確になったり、新しい情報を知ることができたり、一歩前に進む機会になるはずです。
もっと気軽に参加するなら、年に一度の「Fine祭り」へ。経験者による体験談の発表、おしゃべり会、専門家への相談など気軽に話せる場がいくつも用意されていて、「悩んでいるのは私だけじゃない」と仲間の存在を身近に感じられるイベントです。「話したいことはわからないけれど、漠然と不安がある……」という方も、足を運んでみると気持ちが楽になるかもしれません。
もしあなたが、誰にも話せず、声も出せず、孤独でつらい思いをしているとしたら、同じ不妊や不育症を経験した仲間がFineにはたくさんいます。ぜひ声を聞かせてください。ぜひ私たちに会いにきてください。
Fineといえば、忘れられないのが2008年に初めて開催されたFine祭りです。当時、SNSもなく、不妊治療は今より孤立しがちな時代。そんな状況で「ひとりじゃないよ」というメッセージを広く伝えるために開催されたこのお祭り。当院も参加しましたが、予想以上に多くの患者さんが来場され、参加された方々が来た時よりも安心した表情で帰っていった様子が非常に印象深かったです。何もなかった時代から、当事者を支え続けてきたのがFineです。
※2自分の経験を役立てたい、という不妊経験者(治療の有無に関わらず)に向けて、Fineでは「不妊ピア・カウンセラー養成講座」を開講しています。心理学の視点から経験を学び直し、カウンセリングのスキルを磨き、支援者として活動することができます。
「MoLive(モリーブ)」代表の永森咲希さんは、6年間の不妊治療を経て、子どものいない人生を歩まれています(※3)。何度も希望と落胆を繰り返し、自分の体や家族についてしっかり向き合ったことで、子どもを願う人・叶わなかった想いにも深く寄り添うサービスを提供しています。
安心できるのは、対象となる悩みが広範囲かつとても細かく設定されていること。当事者のケアには、複数人で集い語れる「茶話会(わかちあいの会)」やオンライン相談室「ハナセルフ」があります。「茶話会」は4つのテーマ(治療に悩む方々の会、やめ時を考える会、男性不妊の会、卒業生の会)にわかれているので、自分の置かれている環境に合わせて、同じ想いを共有できる当事者と話すことができます。「ハナセルフ」は生殖心理や一般心理に精通したカウンセラーと一対一。妊活にかぎらず、キャリア、サードパーティー支援、家族関係など相談項目が細かく設定されているので、適した先生に相談しやすくなっています。
そもそも、子どもを持つ/持たないという選択に悩んでいる人もいると思います。「医療・企業・教育の領域が横の連携を取りながら、子どもを持つこと・持たないこと・持てないこと、を支える社会の体制が必要」という思いから、企業や教育機関と連携し、企業では当事の両立支援や制度設計のための知識を伝える研修を、また教育機関では学生に向けて仕事のキャリアだけでなく、ライフキャリアを考える出張授業を実施。
また、「子どもを願う気持ちの温度差、不妊治療についての考え、あきらめた後の揺らぎなど互いの想いについて言語化できないカップルのために」と、ふたりの気持ちを整理する手助けになる「くぷるカード」を現在制作中。パートナーとの話し合いをサポートしてくれるカードで、この秋クラウドファンディングが開始予定です。治療中の方からやめると決断した人まで、誰一人としておいてけぼりにしない活動をされている団体です。
「妊娠できない」という状態に、心痛めている方がどれだけいらっしゃるでしょう。妊娠できない自分を責め、子どもを持てない自分を認められない方が少なくありませんが、あなたの命も大切です。頑張り過ぎず、抱え込まず、自分を労わることを忘れないでください。わたしたちモリーブは、あなたの子どもを願う想い、叶わなかった想いを精一杯支えます。
不妊治療の後、次の月経が来てしまうという「喪失体験」に対する支援に正面から向き合ってきたのがMoLiveです。長年の支援を通じて、良好な夫婦関係であっても、喪失の気持ちは共有することが難しいことがわかったそう。そこでMoLiveは、お互いの気持ちをカードで伝え合う新たな支援を開始。このカードは、「時」「話題」「感情」「言葉」の4種類に分類され、イラストのかわいいキャラクターがユーザーの「伝える・聞く」のハードルを下げ、やさしくサポートしてくれることが期待されます。
※3永森さんの不妊治療の経験についてくわしく知りたい方は、著書『三色のキャラメル –不妊と向き合ったからこそわかったこと-』をお読みください。
「ninpath(ニンパス)」は不妊治療を可視化しサポートする、スマートフォンなどで使用できるアプリです。不妊治療とひと言でいっても、その人の治療ステージや妊活に対する考え方によって、知りたい情報もさまざま。「ninpath」は日記を書くように、治療した日付や方法などを周期単位で書き込むことができます。そうすることで、治療履歴や現在のステータスを把握できたり、状況が近い第三者の治療統計データを見たりすることができ、客観的なデータに基づいて悩みを解決するヒントを提案してくれます。
データが“絶対”ではありませんが、情報が少ない不妊治療において、「次のステージに進むタイミングは?」「どんな治療方法を取り入れればいいの?」といった疑問を解消する、判断材料のひとつになるはず。パートナーとも共有できるので、歩幅を合わせて不妊治療に望むことができます。
また、オンラインカウンセリング「ninpathケア」も実施。カウンセリングの種類は大まかに4つで、生殖全般のモヤモヤについては「生殖心理カウンセリング」、治療の進め方については「不妊カウンセリング」、遺伝に関する疑問は「遺伝カウンセリング」、治療と仕事の両立については「キャリアカウンセリング」があります。ninpathアプリと併用すれば、登録された治療歴などの情報を事前にカウンセラーに共有しながら効率的に相談することも可能です。「自身でもはっきり言語化はできない心のもやもや、なんとなく疲れている、と感じるといった状態の方にもご利用いただきたいです」という思いから、流産・死産、産まない選択といった多様な困りごとの相談を受けつけています。
私たちはこれまで、口コミ頼りの手探りな不妊治療について、遠回りをすることなくそれぞれに合った治療方針を、安心・納得を持って検討できるようサポートを行ってきました。オンラインという特性から女性はもちろんのこと、お二人の時間が合わせづらいカップルカウンセリングや男性お一人でのご相談実績も多数ありますので、治療中のお悩みや不安などお気軽にご相談いただければと思います。
当院の治療相談室という、他院の患者さんを対象とした個別相談の中で多い質問の一つに「自分の治療の位置づけ」があります。具体的には、自分の治療が体外受精全体の中でどの位置にあるのか、自分の結果が一般的なのか、そして今後の選択肢についてです。これには治療の可視化が重要で、ninpathアプリが非常に役立つと思います。自分に近い他のユーザーの情報を参考にしながら、ninpathカウンセリングを通じて進む方向を相談できる点も魅力です。
インターネットやSNSのおかげで情報収集しやすくなった一方で、真偽のわからない情報に振り回されて、不安を抱えている人もいると思います。「今のステータスの私たちは、どの情報を収集し、取捨選択していけばいいのか。当事者の記録を残したい」。そうした思いで立ち上がったサービスが「REPOCO」です。
REPOCOは医療機関で行った不妊治療に関する経験をレポートとして残すことができ、治療に踏み出す方や治療中の方がクリニック選びや治療方針選択の参考となることを目指した口コミサイトです。クリニックを卒業・転院した人、治療中の人の経験がレポートとして残されているので、クリニック選び、治療方針の選択の参考になります。
「治療の最短ルートを探す道標になることを願って作りました」ということもあり、口コミが非常に詳細なところが心強いポイント。「一般的な口コミサイトは、投稿者も施設への評価にフォーカスしがちですが、レポコは数値データも残すことができるためか自然と治療内容に重きが置かれ、比較的フラットな視点で綴られた口コミが多いです」。テキストによるレビューに限らず、採卵個数/受精個数/移植可能になった胚数/凍結した胚数、胚のグレードや費用など数値データを記入できるので、客観的な視点でクリニックの評価を無料で見ることができます。とくに、お金や時間もかかる高度不妊治療を始める方は、年齢や数値など属性の近しい方のレビューを読んで、納得のできるクリニック選びに活用ください。
また、当事者の方々が治療に関して話せるオンラインミートアップも定期的に開催中。不妊カウンセラーの資格を持つメンバーが進行してくれるので安心して話すことができます。
レポコはクリニック選びや治療方針の選択に悩んだ開発者自身の不妊治療経験から生まれました。これから治療に踏み出す方々が、クリニック選びや治療方針の選択に迷うことが少しでもなくなり、より納得感をもって治療に臨めるためのツールとなれるよう、レポコは改良を続けていきます。
不妊治療を行う上で、どのクリニックでどのような治療を受けるべきか決めるのは非常に重要ですが、なかなか決断するのが難しいものです。そこで役立つのが、レポコです。レポコは、個人の体験を詳細に記録した口コミが多数投稿されており、従来の口コミよりも具体的で、どのような治療が行われているかがわかりやすいのが特徴です。年齢やAMH、卵巣刺激の方法などの条件でもレポートを検索できるので、自分が知りたい体験談を気軽に読めることも魅力です。
長期にわたる不妊治療は、相性が大事。自分に合うクリニックや治療方法を見つけるためには、まず「治療の全体像」を理解することが大切です。「妊活の歩み方」は、不妊治療の基礎から最前線の治療、クリニックに関する情報まで、医師の監修による信頼できる情報がたっぷり。
はじまりは、不妊治療を経験したタレントの東尾理子さん主宰の「TGPお茶会」。このお茶会で「どこのクリニックがいいの?」「どう選んだらいいの?」といった悩みが度々話されてきたことから、その悩みを共有しようという思いで団体が立ち上がりました。
とくに、不妊治療をはじめたばかりの方、治療をはじめるか悩んでいる方に向けて、不妊治療のステップや治療方法の種類などの基礎知識が患者目線でわかりやすく紹介されています。心理士によるストレスケアや培養士による講座のほか、男性不妊の医師による講座も公開されているので、夫婦で不妊治療に関して学ぶこともできます。また、パートナーとして認定されたクリニックの検索も。東尾さんと医師の対談動画はクリニック選びのヒントになります。コンテンツのバリエーションも豊かなので、動画やテキストなど、慣れ親しんだ方法で情報に触れてみてください。
「妊活研究会」というオンラインコミュニティでは、お茶会やオンラインのお話会、掲示板などさまざまな方法で、日々リアルな情報を交換できます。東尾理子さんご自身が妊活に取り組む人たちと支え合いながら治療を乗り越えた経験から、こうした場所が必要だと思ったそう。クローズドなので、安心して悩みを話すことができる場になっています。
一般的には「不妊治療」という表現をしますが、私たちは不妊の「不」が嫌で、「子どもを授かる為に病院に通ってる」という意味でTrying to Get Pregnant、この頭文字をとりました。妊娠を望むことは、明るく前向きなことでしかないと思っています!悩んでいるのは一人ではないです。将来の自分のために今を一生懸命大切にしていきましょう!
妊活の歩み方の代表を務める東尾理子さんは、ご自身の不妊治療をきっかけに妊活支援を始められ、現在まで精力的に活動を続けていらっしゃいます。妊活の歩み方のホームページには、これから妊活を始める方や治療中の方に向けて、「妊活の全体像」や「各治療の進め方」がわかりやすく説明されており、当事者目線で丁寧に作られていると感じます。また、会員同士の情報交換がオンラインとリアルの両方で行える点も魅力的です。
Fine | MoLive | ninpath | REPOCO | 妊活の 歩み方 | |
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カウンセリング (臨床心理士や心理カウンセラーなどによるカウンセリング) | ● | ● | ● | ● | ● |
イベント (複数人の当事者がおしゃべりするイベント) | ● | ● | ● | ● | ● |
オンラインコミュニティ (治療について書き込む掲示板など) | ● | ● | |||
サポートアプリ (不妊治療をサポートするアプリ) | ● | ||||
プロダクト (治療をサポートする商品) | ● | ||||
キャリア形成サポート (不妊治療中の働き方・キャリアをサポートするサービス) | ● | ● | ● | ||
アンケート調査 (不妊治療の現状を伝えるアンケート調査) | ● | ● | |||
メディア (インタビュー記事、コラム記事などのコンテンツ発信) | ● | ● | ● | ● |
都内初の不妊治療専門クリニックとして、昨年30周年を迎えた「はらメディカルクリニック」。不妊治療はすること自体がストレッサーになるため、心のケアとセットで行ってほしいという考えから、いろいろなサポート体制を提供しています。
「お悩み相談」はその名の通り、さまざまな不安やモヤモヤに応えるサポートのこと。初診前、通院中、ご卒業前などステージに合わせて、臨床心理士・不妊カウンセラーによる心理カウンセリング、看護師・培養士による受精や培養についての相談、看護師による10分相談など、悩みに合わせて細かく相談先が設定されています。くわしくはこちらを参考にしてください。
また、2013年より「不妊治療の終結を一緒に考える会」を年1回開催しています。この会は、治療を終結することや答えを出すことを目的とせず、不妊治療を終えた経験者の体験談や対話を通じて、視野を広げ、悩みを分かち合い、自分の気持ちと向き合うための会です。
最後に、「妊活・不妊治療に心のケアは不可欠だからこそ、クリニックだけではできない部分をサポートする妊活支援団体のサービスを患者さまに届けていきたい」という強い思いを持っている、はらメディカルクリニックのコメントをお届けします。
不安を感じたら、妊活支援団体の力を借りませんか。
不妊治療は、心身ともに大きな負担がかかります。時間の調整に苦心し、痛みを伴う治療に耐え、時には「本当に妊娠できるのだろうか」という不安が頭をよぎることもあると思います。一人で、あるいは夫婦だけでこの道を進むのは、簡単なことではありません。
そんな時、同じような道を歩んできた先輩たちが立ち上げた妊活支援団体のサービスが、皆さんの力強い味方となります。
不妊治療といっても、その内容は多岐にわたり、クリニックによっても治療方法や設備は異なります。それぞれの身体に合った治療法も人それぞれです。そんな多様なニーズに応えるため、各団体やサービスは独自のサポートを提供し、利用者の個々の状況に寄り添っています。
妊活に関する悩みや不安に対して、まずは試してみたいと思えるサービスを利用してみてください。あるいは、共感できる団体に参加してみるのも良いと思います。今よりも少しでも負担が減り皆さんらしい妊活を進めることができることを願っています。
不妊治療当事者である柿沼あき子さんと塩谷舞さんのインタビューでは、「積極的に情報をとりにいくこと、そして“治療の全体像を見る”ことはすごく大事だと感じています」(柿沼)とありました。
これらのサービスを活用することで妊活や不妊治療について知り、数ある選択肢の中から自分に合うものを見つける手がかりになればと願います。