Column

ガイドライン改定:匿名AIDの今後について

ガイドライン変更第一弾。治療要件・費用・匿名AID変更について

当院では、2026年8月1日より、提供精子による生殖補助医療のガイドライン第8版への改定を予定しています。

今回の改定は大幅な変更となるため、詳細は7月中旬頃に改めてご案内いたしますが、治療選択に大きく関わる内容について先にお知らせいたします。

第1弾の変更点

①IVF-DにおけるAID回数要件の廃止

AIDを行わずに最初からIVF-Dを選択できるようになります

②AIDも非匿名化へ

AIDにおいても非匿名精子を使用します

当院の提供精子による生殖補助医療は、完全非匿名へ移行するため、匿名AIDは現在保有している精子在庫をもって終了となります。匿名ドナー精子の新規受付は行わず、在庫がなくなり次第終了となります。

非匿名精子とは、出生した子どもが成人後に希望した場合に接触(メール・電話・手紙・対面等)が可能なドナーの精子

匿名精子とは、接触できないドナーの精子

ガイドライン改定後に可能な治療と手続き

皆様の2026年7月31日時点での状況により、8月1日以降に選択できる治療や必要な手続きが異なります。

ご自身がどの治療を選択できるか・どのような手続きが必要なのかは、以下のセルフチェックフォームでご確認ください。

可能な治療・手続き 【セルフチェック】 フォーム

匿名AIDを継続する方へ

匿名AIDは現在保有している精子在庫限りで終了となります。匿名ドナー精子の新規追加は行わないため、今後は血液型による在庫の偏りが大きくなります。

そのため、匿名AIDを継続する方には、医師が匿名AID実施日を決定した後、「匿名AID|提供精子の血液型選択登録」を行っていただきます

対象の方には、匿名AID実施日決定後に登録フォームをご案内します。他院で匿名AID実施日を決めている方には、匿名AID予約のお電話をいただいた時にご案内いたします。

なお、血液型選択登録は匿名AID実施日決定後にのみ可能です。周期開始時などの事前登録はできませんので、あらかじめご了承ください。早めに登録したいとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、正確で公平な在庫管理のため、ご理解とご協力をお願いいたします。

提供精子ストック状況

現在の在庫状況は以下よりご確認ください。

提供精子ストック状況

非匿名AIDの費用

AIDはIVF-Dの3倍の提供精子を使用

IVF-Dは顕微授精のため、卵子に直接精子を注入して授精させることで必要な精子量は少なくて済みます。一方、AIDは人工授精のため、子宮内に注入した精子が卵管まで到達する必要があり、多くの精子量が必要です。AID1回あたりに必要な精子量は、IVF-Dの3倍となり、提供精子を3本使用します。

非匿名AID費用の内訳

提供精子代 71,500円×3本
人工授精 22,000円
合計:236,500円/1回

なぜ非匿名AIDは高額になるのか

匿名ドナーと非匿名ドナーでは、ドナーの特性や精子の管理コストが大きく異なるためです。

匿名ドナーは提供を継続する方が多く、また匿名AIDのみに使用されます。AIDの妊娠率は低めのため、ドナーあたりの出生児数が上限の10人に近づくことは過去一度もなく、提供された精子を無駄なく使用することができていました。そのため、精子管理や感染症検査にかかるコストが抑えられていました。

一方、非匿名精子はIVF-Dにも使用されるため、妊娠率が高いIVF-Dでは出生児数の上限に達しやすい特徴があります。その場合、提供された非匿名精子に余剰があっても使用できず、廃棄となります。

また、非匿名ドナーは登録者数は多いものの、一人あたりの提供回数は少ない傾向があります。そのため、精子の管理や感染症検査の回数が増え、コストも高くなります。このような違いから、非匿名の提供精子は使用する提供精子量に応じた料金設定としています。

非匿名ドナーとは、出生した子どもが成人後に希望した場合に接触(メール・電話・手紙・対面等)が可能なドナー

匿名ドナーとは、接触できないドナー

治療費と妊娠率

提供精子の生殖補助医療は、保険適用外のため費用負担は大きいです。そのため、1回あたりの費用だけでなく、妊娠率も含めて考えることが重要です。

AIDの治療費と妊娠率

2023~2024年に当院で実施したAID 1,032周期の結果では、妊娠率は37歳以下で9.3%、38歳以上で3.1%でした。また、20周期以内のAIDで妊娠した方の平均妊娠周期は3.1周期でした。

AIDを3回実施した場合の費用は、
・匿名AID 93,500円 × 3回 = 280,500円
・非匿名AID 236,500円 × 3回 = 709,500円
となります。

IVF-Dの治療費と妊娠率

一方、体外受精では、36歳以下の胚移植1回あたりの妊娠率は53~57%(4~6AA・BA・AB胚)です。

体外受精は、採卵数・受精数・培養日数・凍結胚数などによって費用が変わります。
例えば、「採卵数 5個→凍結胚盤胞3個」の場合に1回目の胚移植で妊娠した場合の総額は以下の表の通り約74万円です。

IVF-Dの各治療 費用
診察・検査・薬 約60,000円
採卵5個 176,000円
顕微授精 154,000円
提供精子代 71,500円
胚盤胞培養5個 69,300円
胚凍結3個 82,500円
胚移植 約125,000円
採卵から胚移植1回目までの合計:約738,300円

もし1回目の胚移植で妊娠に至らなかった場合でも、凍結胚が残っていれば採卵や顕微授精をやり直す必要はなく、追加費用は主に胚移植費用のみです。36歳以下では、胚移植3回までの累積妊娠率は91%以上となっています。

また、IVF-Dで妊娠した後は余剰胚を凍結保存できるため、第2子を希望する場合は胚移植から再開することができ、第1子と第2子で同じドナーになります。

妊娠率は卵子の年齢に最も影響を受けるため、例えば34歳の時に凍結した胚を37歳で移植した場合でも、34歳時点に近い妊娠率が期待できます。その結果、妊娠までの時間や費用を抑えられる可能性があります。

ご夫婦でご検討ください

治療を選択する際には、1回あたりの費用だけでなく、妊娠率、妊娠までにかかる時間、通院回数、将来の第2子のことも含めて、ご夫婦でご検討ください。

よくある質問(60件以上・随時更新中)

患者様からいただいたご質問をもとに、60件以上のFAQを掲載しています。内容は随時追加・更新しています。

ガイドライン改定の【よくある質問】FAQ

本件に関するご質問

今回のガイドライン改定は大きな変更を含むため、ご不明点もあるかと思います。

①本記事、②よくある質問、③可能な治療・手続き【セルフチェック】フォームの3つをご確認ください。それでも解決しない場合は、下記の専用フォームよりお問い合わせください。

ガイドライン8版改定に関するご質問フォーム

なお、本件に関するお問い合わせは、電話およびホームページのお問い合わせフォームでは受け付けておりません。お手数をおかけしますが、回答の統一と正確なご案内のため、専用フォームをご利用くださいますようお願いいたします。お電話をいただいた場合も専用フォームをご案内いたしますので、あらかじめご了承ください。

7/5ガイドライン改定(第2弾)子どもへの支援と提供精子選定方法の変更についてはこちら