不妊治療で使用される排卵誘発剤「レトロゾール(フェマーラ)」とは?効果や副作用、治療の流れについて解説
2022年に不妊治療の保険適用が開始されたタイミングで、従来から不妊治療の排卵誘発剤として使用されていた「レトロゾール」も保険診療内での使用が認められました。レトロゾールは従来、閉経後乳癌に対する治療薬としてのみ、保険診療内での使用を認められておりましたが、不妊治療においての効果も認められたことになります。レトロゾールは閉経後乳癌に対する治療薬だということをご存知の方にとっては、不妊治療の薬として使用することに対して副作用が気になるというお話をよく聞きます。レトロゾールは女性が持つ体の働きをうまく活用しながら、治療の負担を極力かけずに卵胞の発育を促すことができる薬です。
この記事では排卵誘発剤「レトロゾール」の特徴や副作用、不妊治療の流れを中心に、はらメディカルクリニックで治療を受けるメリットも含めて解説します。不妊にお悩みの方は、ぜひお読みください。
排卵誘発剤「レトロゾール」とは?
排卵誘発剤の一つ「レトロゾール」はどのような薬でどのような効果があるのでしょうか。排卵誘発の仕組みも含め、レトロゾールの特徴について解説していきましょう。
そもそも排卵誘発とは?
不妊となる原因の一つに、卵胞の発育不全や排卵障害が挙げられます。排卵誘発は薬により卵胞の発育や排卵を促すとともに、黄体の機能改善を図ることも目的としています。
通常、排卵誘発は卵胞発育不全などの排卵障害のある方に行なわれます。一方で、妊娠率を上げる目的で、正常排卵周期の方にも行なう場合があることも知っておくとよいでしょう。
レトロゾールについて
レトロゾールは内服薬です。薬品名は、ノバルティスファーマの「フェマーラ」が先発医薬品で、「レトロゾール」は複数の製薬会社が製造・販売している後発医薬品(ジェネリック医薬品)となっています。
先に述べたように、レトロゾールはもともと閉経後の乳がんを治療する薬として販売されていました。乳がんはエストロゲンを餌として進行するため、レトロゾールはエストロゲンの合成を抑えることを目的とし、乳がん細胞が増殖しないように働く薬です。この「エストロゲンの合成を抑える」という作用を不妊治療に応用しています。
どういうことかというと、月経がくると脳は、卵巣に卵胞を発育させるための刺激ホルモンFSHを分泌します。FSHの分泌により卵巣ではエストロゲンを分泌するのですが、レトロゾールを服用しているとエストロゲンの合成を阻害するためエストロゲンの血中濃度が低下します。すると脳は、「あれ?エストロゲンが少ないからFSHが足りないのかな」と判断し、FSHの分泌を続けます。このFSHの分泌が誘導されることで排卵誘発に繋がっています。
日本産婦人科医会はレトロゾールを使った場合の排卵率が88.5%、妊娠率は31.3%と公表しました。代表的な排卵誘発剤にはクロミフェンがあり、その排卵率は76.6%、妊娠率は21.5%という結果が出ています。
不妊治療で服用するレトロゾールに副作用はあるのか?
頻度は少ないですがレトロゾールは副作用が生じる場合があります。体内のエストロゲンが低下することが副作用のきっかけになるため、少し更年期障害に似た症状が多いです。具体的には次の通りです。
- 疲れやめまい
- 眠気
- 頭痛
- ほてり
- 関節痛
- 血中コレステロールの増加
- 肝臓に関する値(AST、ALT、ALP)の増加
また、飲み合わせの問題もあるため、ほかの医療機関で薬を処方されている場合は、医師や薬剤師に伝えてください。その際には、お薬手帳の冊子やアプリの活用がおすすめです。
服用中に以下の症状が表れた場合、卵巣過剰刺激症候群など、重大な副作用の前兆を示す場合があります。すぐに医師または薬剤師に連絡して、どのようにすれば良いか指示を受けましょう。
- お腹の張りや下腹部の痛み
- 吐き気がある、または吐いてしまう
- 尿の量が減る
- 体重が急に増加する
- 腰が痛い
上記の副作用が起こる頻度はそこまで高くはないとされています。副作用への備えは必要ですが、ナーバスにもなりすぎないようにしましょう。
不妊治療でのレトロゾールは保険適用に
2022年3月までは不妊の原因が病気による場合は健康保険が使えたものの、原因不明の不妊治療には健康保険が使えませんでした。「特定不妊治療費助成事業」による支援はあったものの、それだけでは到底足りないという患者も多かったことも事実です。
2022年4月から、晴れて不妊治療は健康保険による治療の対象となりました。タイミング法から人工授精、体外受精、顕微授精まで、対象の広さが特徴です。不妊治療で使用する多くの医薬品も保険診療内で処方可能となり、不妊治療を受けやすく子どもを希望しやすい環境になっています。
なお、健康保険を使って不妊治療を受けたい女性の方は、以下に挙げる条件をすべて満たす必要があります。
- 治療を開始する時点で、年齢は43歳未満であること
- 回数は1人の子どもについて、通算で6回まで(40歳以上の女性は、通算で3回まで)
窓口での負担割合は3割です。治療費が高額となった場合は高額療養費制度も適用されるため、負担は極力軽くなるでしょう。不妊治療の保険については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
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【不妊治療】2022年4月から保険適用に|適用条件やメリットについて解説
【保険適用後】不妊治療の費用はどれくらい?妊娠の確率を少しでも上げる方法についても紹介
治療の流れ ~排卵誘発を行なった場合~
ここからは、排卵誘発の治療がどのような流れになるか説明します。
排卵誘発剤の使用を検討【生理1日目~5日目】
排卵誘発剤による治療は、このタイミングで始めることがベストです。医師の診察を受け、どのような治療を行なうか決めましょう。
排卵誘発剤は内服と注射の2種類に分かれており、診察のなかでどの薬で治療するかを決定します。排卵誘発剤の使用の有無やどのように服用すれば良いか、また今後の流れもしっかり確認しておくと安心です。
排卵誘発を実施【生理5日目~14日目】
薬剤による排卵誘発を行ないます。レトロゾールなど内服薬を使う場合は、指示された用法・用量を守って服用してください。服用開始後は超音波検査の日まで、来院する必要はありません。
注射の場合は看護師が打つ方法と自分で打つ自己注射のどちらかを選べます。ただし、看護師が注射する場合は指定された回数の通院が必要となり、手間や時間、交通費などの費用がかかるでしょう。
一方、自己注射の場合は通院の手間はありませんが最初に看護師の指導の下、練習をする必要があります。自己注射の中でも比較的打つのが簡単なペンタイプの注射もあるので、希望される方はご相談ください。
超音波検査【生理10日目~12日目】
排卵日を予想する目的などで行なう検査です。タイミング療法の場合は卵胞が順調に成長しているかどうかを確認したのち、医師から性交渉を持つタイミングの指導を受けてください。人工授精の場合は人工授精実施日、体外受精の場合は採卵日の特定を行います。レトロゾールを使用した周期は卵胞発育とエストロゲンの値は相関しないため、エストロゲンの採血は基本的に行いません。
LHサージ誘起【生理12日目~13日目(排卵36~40時間前)】
排卵が起こる前には、黄体形成ホルモン(LH)が急激に上昇する「LHサージ」が起こります。自然にLHサージを起こす方は特に何もする必要はなく、受診の必要もありません。確実にLHサージを起こしたい場合は、排卵させたい時間の36時間~40時間前に合わせて注射や点鼻薬を使用します。
関連記事:LHサージ誘起
性交渉を持つ【生理13日目~14日目】
タイミング療法の場合は、体調を整えたうえで、医師から指導された日に性交渉を行ないましょう。人工授精の場合は精子の注入、体外受精の場合は採卵手術を行います。
黄体補充療法【生理14日目以降(排卵後)】
せっかく受精しても、着床しなければ妊娠に成功しません。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜を受精卵が着床しやすい環境に整えます。
黄体補充療法は黄体の補充、または内因性プロゲステロンで黄体を維持する方法があります。受精卵の着床環境を整え、黄体機能の維持が目的です。黄体ホルモンだけのもの、黄体ホルモンと卵胞ホルモンがセットになったものなどがあり、投与の方法も内服薬、膣坐薬、注射など、多種多様です。医師は多くの薬のなかから、患者様に合った薬を選びます。
妊娠判定【生理28日目以降(生理予定開始日以降)】
次回の生理開始予定日になっても出血がない場合は、妊娠の可能性があります。妊娠の可否を調べるために行なわれるのは、血液検査です。採血によってhCGホルモンの値を測定して妊娠しているかどうかを判定します。hCGホルモンは、胎盤のもとになる絨毛が分泌するホルモンです。値が高ければ、妊娠成立と判定されるでしょう。なお、体外受精の場合は学会への報告が義務付けられているため胚移植後の妊娠判定採血は必ず行っていただきます。
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レトロゾールの活用で「子どもを持ちたい」という希望をかなえやすくなる
レトロゾールは不妊治療薬として保険適用となったのは最近ですが、すでに10年以上も前から生殖医療(不妊治療)や体外受精などの生殖補助医療(高度生殖医療)で、排卵誘発剤として使われてきました。刺激も比較的弱く不妊治療が保険適用になったこともあり、「子どもを持ちたい」という希望をかなえやすくなります。
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