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40代の妊活の実態とは?アラフォー世代が受けたほうが良い治療法も紹介

宮﨑 薫 医学博士
はらメディカルクリニック理事長・院長

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
日本生殖医療学会認定 生殖医療専門医・指導医
日本内分泌学会認定 内分泌専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

さまざまな理由から、これまで妊娠・出産を考えていなかった人も40代に差しかかってそろそろ子どもが欲しいと考える人もいるのではないでしょうか?40代は20代に比べて妊娠が非常に難しくなってくる年代といわれています。ですが、不妊治療の発展にともない妊娠・出産しているアラフォー世代が増えてきているのも事実です。

今回は40代で妊娠出産が難しくなる理由と、アラフォー世代で妊娠を望む場合受けておくべき治療を紹介していきます。

目次

40代で妊娠が難しくなる理由

妊娠・出産は年齢が上がると難しくなるといわれていますが、特に妊娠率が顕著に下がるのは35歳以降です。同時に流産率も加齢とともに上昇するので、出産率も低くなっていきます。加齢とともに妊娠、出産率が下がる理由はさまざまです。

ここではアラフォー世代の妊娠・出産が難しくなる代表的な要因を3つ説明していきます。

卵子の数が減り質が低下する

女性は胎児の頃から卵子が作られはじめ、母親が妊娠5ヵ月頃に数がピークに達しますが、徐々に減少していき、出生時にはおよそ半数以下になります。通常人間の細胞は分裂によって新しい細胞と入れ替わりますが、卵子は新しく作られることはありません。つまり、卵子の数は年齢とともに減少していくのです。

また、より問題となるのは、卵子の質の低下です。質の低下とは、卵子の染色体といって、卵子細胞が赤ちゃんになるために重要なDNAの集合体の数がおかしくなってしまうことです。

女性は卵子をもって生まれますが、その時点では卵子の染色体の数は多いため、「減数分裂」という、特殊な細胞分裂を2回行なうことで数を調整します。

しかし、この時に、年齢を重ねた卵子は減数分裂がうまくいかなくなり、染色体異常が発生する確率が上がってしまうのです。

その結果、受精しにくい、あるいは受精卵が育たない、受精卵が子宮に着床しない、妊娠しても流産してしまうという結果に繋がります。

また、生まれたお子さんの健康に問題が生じる(先天性染色体異常)場合もあります。

婦人科系疾患になりやすくなる

女性は年齢を重ねると、婦人科系疾患にかかりやすい傾向にあります。これは年月共に小さな変異が積み重なってくるからです。

おもに子宮内膜症や子宮腺筋症、卵管炎などの婦人科系の疾患は不妊の原因の一つです。子宮内膜症は卵子の質の低下を招くことがあり、子宮腺筋症では着床に影響が出ることがあります。

また、性感染症であるクラミジア感染症に由来する卵管炎は卵管が狭くなったり詰まったりする原因の一つです。

クラミジアは感染しても症状が出にくいため、感染に気付かない場合もあります。子宮内膜症は生理痛の悪化、子宮筋腫は経血の増加などの症状が出ますが、普段の生理が重くなっただけととらえられて治療が遅れることがあります。

結果、これらの病気を放置してしまい妊娠率の低下に繋がってしまうのです。子宮筋腫は筋腫の場所によっては不妊の原因になることがあります。

精子の質も低下する

男性の加齢については女性の加齢よりも影響が少ないとされています。

その理由は、精子は卵子と違い、約80日周期で新しく作られる細胞だからです。ですが、精巣で精子を作る機能自体は年齢と共に低下します。

最近は加齢により精子の質も低下するという報告も見られるようになってきました。具体的なものとしては精子の運動率、精子量の低下や、DNAの断片化率の上昇が挙げられます。

妊活においては、精子の運動率や精子量が低下しても精子があるのであれば顕微授精をすることができます。しかし、男性の加齢によりDNAの損傷率が上昇すると、精子は卵子との受精はできてもその後の受精卵の成長が悪くなったり、流産の確率が上がったりして出産に繋がりにくくなります。

したがって、40代で妊娠を考えている場合は、精子のDNA断片化率の検査も受けることをおすすめします。

不妊治療の種類

ここからは実際にクリニックで行なわれる治療について紹介をしていきます。40代におすすめの治療方法を紹介する前に不妊治療の種類について大まかに3つ見てみましょう。

それぞれの治療にはメリットとデメリットがあり、一般的に期待できる妊娠率が違います。どの治療法を行なっていくかはご夫婦がどのような妊活を行ないたいのかが一番重要になります。

タイミング法

まず紹介するのは超音波検査などを用いて、排卵時期を見極め性交の時期を指導していくタイミング法です。生理周期に合わせて通院し、超音波検査で卵胞の発育具合を確認し、排卵日を予測します。

そして予測された排卵日に合わせて医師から性交渉の時期を指導されるので、その指導された日に性交渉を行なうことで妊娠率を上げる治療法です。

卵胞の成長や排卵を促す薬や着床に重要な黄体ホルモンを補充する場合もあります。

メリットは最も負担が少なく、自然妊娠に近い治療法といえます。デメリットは性交渉の時期を指導しているだけのため、精子が少なかったり、運動率が低い場合や、女性の妊娠機能が低い場合にはタイミング法では効果がありません。

タイミング法について詳しくは下記のページを参照ください。

【不妊治療】タイミング療法について|全体の流れや費用、成功率を少しでも上げる方法を紹介

人工授精

人工授精は精子を子宮に直接注入し、精子が卵子に出会う確率を上げる治療法です。

名前から、自然妊娠とはかけ離れた人工的な受精方法と思われる方もいるかもしれませんが、実際に医療が介入するのは精子が子宮に入る段階までです。受精、着床などは自然妊娠と同じです。

そのため、メリットがあるのは、精子に問題があり、運動精子量が足りない場合に、人工授精によって子宮内まで精子を注入できることです。また、性交障害にも有効です。

デメリットは、もともと精子に問題がないカップルの場合は、精子は自力でも子宮内に侵入することができているため、人工授精を行なっても妊娠への効果はあまり期待できません。

なお、人工授精で妊娠する場合は、4~6回で妊娠が成立するケースが多く、それ以上実施しても累積妊娠率は横ばいです。そのため、体外受精への移行を検討します。

人工授精については詳しくは下記のページを参照ください。

人工授精(AIH)|治療スケジュールや妊娠確率、費用などについて詳しく紹介

体外受精

体外受精は卵巣から卵子を取り出し、卵子と精子を体外で受精させて、受精卵を子宮に戻す、という治療法です。妊娠直前の受精卵を子宮に戻すことができるため、不妊治療の中で最も妊娠率が高い方法です。

排卵障害がある方、原因不明不妊の方、精子の数が少ない方、高齢の方、自然性交や人工授精で妊娠が成立しなかった方に必要な治療法です。

40代が妊娠率を上げるために受けたい不妊治療

40代になると妊娠・出産が難しいことはここまで述べてきた通りです。

しかし、40代でも合理的で確率が高い不妊治療をなるべく早い時期に受ければ妊娠する可能性は高まります。ここからは40代で妊娠を考えている方に受けてほしい不妊治療を見ていきましょう。

妊娠・出産を希望するなら早めに不妊治療をはじめる

一般的に不妊の定義は日本産科婦人科学会により「妊娠を望む健康な男女が避妊をせず性行為をしているにも関わらず、一定期間妊娠しないもの」とされています。

しかし、35歳以上の場合は、前述の通りの理由により、卵子や精子レベルで妊娠が難しくなっているため、早めに不妊治療をはじめましょう。

しかし、先ほども述べたように35歳を過ぎると自然妊娠の確率は顕著に下がる傾向です。妊娠を検討した時点でまず医療機関を受診し、検査を受けたほうがよいでしょう。

はらメディカルクリニックでも、患者様ごとのご状況に合わせて、初診、説明会、検査など行なっておりますので、ぜひご検討ください。

合理的で確率が高い体外受精を

40代はタイミング法や人工授精はもちろん、体外受精であっても卵子の老化による、減数分裂の失敗から生じる染色体異常により妊娠は難しくなります。

そのため、早い段階で妊娠確率が高い体外受精を開始しましょう。体外受精ではいくつかの卵子を採取して受精させ、成長度合いの良い胚を選んで移植することができるため、1回のチャンスを有効に使うことが可能です。

また、40代は妊娠確率が低いだけではなく流産の確率が上がります。治療の開始が遅れれば遅れるほど出産が難しくなるため、時間を無駄なく進めることが大切です。

多くのカップルが最初は自然な妊娠を望みます。なんとなく不妊治療に抵抗がある気持ちもよくわかります。

しかし、当院は、ゆっくり治療を進めたことで最終的に出産することができなかったカップルも多く見てきました。そのカップルが必ずおっしゃることは、もっと早く体外受精をしておけばよかったという後悔の気持ちです。

不妊治療や体外受精は長く行なうものではありません。早くはじめて(早いほうが妊娠率が高いので)、早く終わらせましょう。出産した後の家族時間を大切にしてほしいです。

卵子の凍結保存

現時点でパートナーはいないが将来的には妊娠を検討している場合、卵子凍結という選択肢があります。

卵子凍結とは、妊娠する力が年齢と共に低下することを防ぐために、その時点で一番若い卵子を凍結保存しておくというものです。

例えば36歳の時点で結婚の予定がない場合に、将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存しておき、その後結婚した時に凍結卵子を使用して妊活をするというものです。

メリットとしては、卵子が若い方が染色体の異常が少ないため、妊娠出産に繋がりやすく、お子さんの健康への影響も少なくなります。

しかし、卵子凍結はデメリットもあり、これが重要になります。また、40代での卵子凍結は正しい知識に基づく判断が重要になります。

当院では月2回卵子凍結説明会を実施し、AMH検査結果をもとに、メリットやデメリットを個々に検討できるようにしています。卵子凍結について詳しく検討したい場合は説明会にご参加ください。

妊娠率を上げるために通院と併せてできること

アラフォー世代が妊娠・出産をするためには、早期の不妊治療が何よりも大切です。その上で生活習慣の見直もできるようならば健康のためにも良いと思います。

生活習慣を整えることで劇的に妊娠率が上がるわけでありませんので無理をせずに、心身共に余裕がある時に意識してみてください。

生活習慣を整える

やせすぎも太り過ぎも不妊のリスクが上がることがわかっています。バランスのいい食事と適度な運動、十分な睡眠をとり健康な体で妊娠に備えましょう。ただし、過敏になりすぎてストレスがかかってしまうのもよくないので、無理をしない程度で大丈夫です。

男性に関しては、生活習慣の改善に加えて、禁煙や睾丸を温め過ぎないことも効果的です。精子や精巣は熱に弱いので頻繁な長風呂やサウナは頻度を減らしましょう。時々なら問題ありません。タバコは血流の悪化による勃起不全や精子の減少や、DNAの損傷の原因になりますので、できれば禁煙しましょう。

足りない栄養分を補う

妊娠のためにはさまざまな栄養素が必要ですが、食事で補いきれない場合には食事と一緒にサプリの併用もおすすめです。

女性は葉酸、オメガ3脂肪酸、ビタミンDなど妊娠に必要で不足しがちな栄養素を、男性はビタミンCやビタミンEに代表される抗酸化ビタミン、亜鉛などの補充が望まれます。

まずは食生活を見直すことが最優先ですが、それでも不足している場合はサプリで補いましょう。

まとめ

不妊治療の技術の発展にともない、アラフォー世代が妊娠・出産することが可能になってきました。しかし、加齢とともに妊娠率の低下、流産率の上昇が起こることは避けられず、不妊治療は長期化しています。40代で妊娠・出産を望む場合、一日でも早く治療をスタートするのが望ましいです。

はらメディカルクリニックが提供する40代の妊活

当院のコンセプトは「最短の妊娠」なので、40代の妊活は体外受精を推奨します。40代女性の卵巣に残っている卵子の多くは質が低下している可能性が高いです。

これは、食生活などの後天的な理由ではなく、年齢と共に自然に生じる現象です。そのような状況の中で質が良い染色体が正常な卵子に出会う確率を高められるように合理的な体外受精を最優先します。

また、卵子の数は個人差があり、卵子を育てるための卵巣機能(卵巣の反応力)にも個人差があります。当院は、個人差が出る部分をなるべく正確に見極め、その時点で最も確率が高まる方法を提案します。

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