不妊症・男性不妊・人工授精・体外受精・胚移植・AID・精子バンク等の不妊治療・不妊専門クリニック。

トランスジェンダー男性とシス女性のご夫婦を対象とする生殖補助医療ガイドライン改訂案への意見募集

当院では、精子提供による生殖補助医療のガイドラインを改訂し、トランスジェンダー男性とシス女性のご夫婦(以下、当該夫婦)を対象とした新たな指針の追加を予定しています。この改訂案について、ご意見を募集いたします。

目次
  1. 新指針策定の経緯
  2. 新指針の内容
  3. 意見募集の要項

1.新指針策定の経緯

これまでの取り組み

当院は2022年1月より、当該夫婦への治療提供を開始いたしました。国内に先行研究がなかったため、まずは診療実績を積み重ね、その経験を踏まえてガイドラインを策定することとしておりました。

現状と課題

当該夫婦への治療開始から約3年が経過し、現在では当院のAID・IVF-D治療患者の約24%が当該夫婦となっています。

この間、夫がトランスジェンダーであることについて、妻の両親へのカミングアウトの有無、そして子どもへの出自の告知にあたり夫がトランスジェンダーであることを伝えるかどうかについて、夫婦それぞれの考え方があることがわかってきました。その結果、4つのパターンが確認できました。

①妻の両親にカミングアウトしており、生まれる子にもカミングアウトする意向の夫婦

②妻の両親にはカミングアウトしているが、生まれる子にはカミングアウトしたくない意向の夫婦

③妻の両親にはカミングアウトしていないが、生まれる子にはカミングアウトする意向の夫婦

④妻の両親にカミングアウトしておらず、生まれる子にもカミングアウトしたくない意向の夫婦

②と③のケースでは、「子どもの出自を知る権利」と「トランスジェンダーであることのカミングアウトに関する夫の権利」との両立が課題となりました。④のケースについては、より慎重な支援に時間をかけました。当院では、これらの課題について、子どもの福祉の専門家、GID当事者支援の専門家、子育て中の当該夫婦との意見交換を重ねた結果、当院における当該夫婦を対象とした新たな指針を策定いたしました。

2.新指針の内容

以下の内容をガイドラインに追加することを予定しております。なお、これらは追加を予定している原文のままの表現となっています。

  • 精子提供の医療を実施する医療機関として、当院が配慮すべき子どもの出自を知る権利は、「精子提供による出自」の部分です。そのため、精子提供で生まれたことを告知することは当然必要なことだと考える夫婦を治療の対象とします。
  • なぜ夫に精子がないのかについては、がんなどの病気、事故、先天的な要因、トランスジェンダーなど、様々な理由があります。これは夫本人の物語であり、「誰に話すか」「話さないか」「いつ話すか」を決める権利は夫自身にあります。
    (補足)精子提供による出自について、子どものための安全な告知ができていれば、子どもが後から夫の事情を知った場合でも、子どものアイデンティティが崩壊するという事態にまで至る可能性は低いと考えています。なお、どの家族にもそれぞれの事情があり、その事情について子どもにどこまで知る権利があるのかを、当院は判断する立場にありません。
  • 子どもは、なぜ父親に精子がないのかを知りたがるかもしれません。また、物心がついてから知ることで衝撃を受けるかもしれません。このような可能性が少なからずあることを踏まえ、当院は、夫本人が子どもに安全にカミングアウトできる支援が重要と考えています。ただし、当院がカミングアウトを強制することは決してありません。
  • 夫がトランスジェンダーであることについて、当面の間、子どもにカミングアウトしない場合は、それを子どもに知られることを避けるために、精子提供について「子どもに告知しない」、あるいは、「告知を先送りする」ことにならないような告知計画を具体的に考えてください。
  • 入浴やプールの着替えなど、日常生活の中で、父親の外性器の形について子どもが疑問を持つ可能性があります。そのような場面では子どもに対してどのように対応するのか、夫婦は具体的な方法の検討が必要です。
  • 子どもへのカミングアウトをしない場合、または将来的にカミングアウトを行う場合、その期間における父親と子どもの触れ合いにおいて、真実を知られることへの不安から子どもとの関係が疎遠にならないよう、夫婦の具体的な行動指針の検討が必要です。
    (補足)「子どもに聞かれたら話す」とお考えになるご夫婦もいますが、子どもは家族に何か秘密があると感じても、親には聞けない場合が多く、それは結果として親子関係を疎遠にする要因となります。このような事態を防ぐため、夫婦が考える具体的な対応方法についてカウンセリングで確認します。
  • 将来、子どもへカミングアウトする場合の伝え方について、カウンセリングにて確認し、支援します。
    (補足)子育てをしているトランスジェンダー男性とシス女性のご夫婦から、子どもにトランスジェンダーであることを知られずに子育てすることは不可能に近いという体験談を伺っています。「言わなければ知られない」「子どもは気付かないだろう」という考えは、実際には楽観的かもしれません。

3.意見募集の要項

募集方法

こちらのアンケートツールにてご意見を募集します。

意見の開示

いただいたご意見は、精子提供による生殖補助医療のパブリックコメントの情報サイトにて公開します。なお、当院から個別の意見への回答はいたしません。

募集期間

2024年12月8日(日)から15日(日)

初診予約はこちら