ホモシステイン検査を開始、新遺伝専門医、2024年妊娠率、火曜・金曜に注意 No.187
新年明けましておめでとうございます。
(目次)
【1】葉酸不足の確認:ホモシステイン検査を開始
【2】新:遺伝専門医
【3】2024年の妊娠率
【4】火曜・金曜に注意!
—【1】葉酸不足の確認:ホモシステイン検査を開始
葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、細胞増殖に必要なDNA合成に関与している栄養素です。不足すると胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるため、厚生労働省も妊娠を計画している女性にサプリメントの摂取を推奨しています。
葉酸が体内で適切に機能しているかを確認するためには「ホモシステイン」の測定が効果的です。この検査では、葉酸の代謝状態を評価し、必要な葉酸の摂取量をご案内いたします。
・検査開始日:1月9日(木)
・検査時期:初診日
・費用:2,580円
・方法:血液検査
Q1. 再診でもホモシステイン検査をした方がいいですか?
A1. 以下に該当する方はご希望により検査をしてください。
・現在1日400μgの葉酸を摂取していて、ホモシステインを確認したい方
・葉酸をこれから摂取する方
・1日800μgの葉酸(エレビット)を摂取中で、結果によっては摂取量を減らしたい方
※すでに800μgの葉酸を継続して摂取中で、今後も同量を継続予定の方は検査不要です。
Q2. 再診でホモシステイン検査を希望する場合は?
A2. 自由診療の方は診察時に医師や看護師にお伝えください。保険診療の方は周期治療が始まる前に、「採血・注射のみ」という項目をご予約ください。時期が不明な場合はお電話でお問い合わせください。
Q3. なぜホモシステインを測定するのですか?
A3. ホモシステインは葉酸の代謝状態を包括的に評価でき、血中葉酸濃度の測定よりも実用的で信頼性が高いからです。
Q4. 葉酸と体外受精の成績に関係はありますか?
A4. 関係を示唆する研究があります。
・葉酸やビタミンB12が高い群では生児獲得率が高い(AM J Clin Nutr 2015; 102: 943)
・サプリメントからの葉酸摂取量は良好な卵巣予備能と関連する(Fertil Steril 2022; 117: 171)
Q5. ホモシステインと体外受精の成績に関係はありますか?
A5. 以下の研究が関係を示唆しています。
・ホモシステイン濃度が妊娠成功率や流産率の予測因子になる可能性(Nutrients 2023; 15: 3730)←当院の小川誠司先生の論文です。
・卵胞液中ホモシステイン濃度が胚の質に影響する可能性(J Obstet Gynaecol. 2021; 41: 588)
—【2】新:遺伝専門医
本年より、遺伝外来は、東京医科大学病院 准教授の 小野政徳先生 にご担当いただきます。小野先生は産婦人科医および遺伝専門医としての豊富な経験をお持ちで、複雑な遺伝分野においても適切な判断とアドバイスを提供してくださいます。遺伝について不安なことや分からないことがあれば、ぜひ踏み込んでご質問ください。
<予約方法>
診療予約システムにログインし、「着床不全・PGT(着床前診断)・遺伝外来」→「遺伝外来」を選択
↓小野先生ご紹介ページ
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/sanfu/staff/2128.html
—【3】2024年の妊娠率
2024年の体外受精の妊娠率は、10月までのデータで上昇が見られています。その要因の一つとして、凍結融解胚移植の前に実施する LAH(レーザーアシステッドハッチング) に Artificial shrinkage(人工収縮) を導入したことが挙げられます。
▼Artificial shrinkage(人工収縮)とは?
凍結胚盤胞を融解後、収縮のタイミングを人工的に調整する技術です。この手法により、回復が早い良好胚にもLAHが適用できるようになりました。
▼成績の比較
①Artificial shrinkage+LAHを実施した群
②(回復が早く)LAHが実施できなかった群
<妊娠率>
39歳以下
①51.2%
②40.3%
→①の方が10.9%高い(p<0.01)
40歳以上
①40.8%
②21.2%
→①の方が19.6%高い(p<0.01)
この技術の導入により、全体の妊娠率の向上に寄与していると考えられます。
—【4】火曜・金曜に注意!
本年より、火曜日の診療が短く、金曜日が夕方までの診療です。(昨年までの逆です。)
不妊治療は、「やってみないとわからない」と言われる不確実な部分が多い医療です。だからこそ、当院では最新の知見に基づいた技術や手法を積極的に導入し、常に結果に結びついているか統計的な振り返りを怠らず、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な方法を提案していきたいと思います。
どうぞ、本年も宜しくお願いします。
(2025年1月5日)