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着床前診断・出生前診断の違いとは|診断の流れや方法、受けることができる条件について紹介

不妊治療をしている夫婦の中には、着床前診断を検討しつつも、検査の内容や方法、どんな人に向いているのかがわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 検査内容や特徴を正しく知ることで、今後の選択肢が広がります。 この記事では、着床前診断と混同されやすい出生前診断との比較をしながら、検査を受けられる条件、検査内容について解説します。 着床前診断に加え、出生前診断をうけることも検討した方がよいと言われています。最後まで読むことで、両方の診断の一連の流れもわかるようになるでしょう。

着床前診断について

まずは着床前診断の内容や、診断を受けることができる条件について解説します。

着床前診断とは?

着床前診断とは、体外受精をして得られた受精卵の一部を採取して、染色体の本数や構造に異常がないかを調べる検査です。 妊娠12週未満の初期に起こる流産のおもな原因は「胚の染色体異常」と言われています。着床前診断を行うことによって、染色体異常のある胚を避けて移植することが可能となり、結果として1回の移植における流産率の低下が期待でき、妊娠までの時間を短縮することができます。  着床前診断は、「体外受精をしても着床しない」「着床しても流産する」といった夫婦のどちらかに染色体の構造異常が認められた場合に行うことができます。 しかし、着床前診断には高い技術を要するうえに倫理的な問題などもあり、日本ではまだ安全性が確立されてはいない発展途上の技術といえるでしょう。  そのため、検査を実施する施設は日本産科婦人科学会による厳正な審査を受け、承認される必要があります。 海外では1990年から導入され、さまざまなケースで着床前診断が行なわれていますが、日本ではまだ臨床研究の段階です。 着床前診断は、そもそも遺伝的に致死率の高い疾患を引き継いでいるかどうかを、受精卵の段階で調査するための方法として導入されたものです。そのため、男女の産み分けの目的でこの技術を使用することはできません。

着床前診断を受けることができる条件

着床前診断を受けることができるのは、次の条件に該当する方です。 ・反復ART不成功 複数回の体外受精を行なっても妊娠しない場合を指します。直近で体胚移植を2回以上行なっても、いずれも着床しないか、妊娠はしても胎嚢(胎児が入っている袋)の確認には至っていない夫婦が対象です。 ・習慣流産 妊娠しても流産を繰り返している場合を指します。直近の妊娠で胎嚢を確認できてから、2回以上流産している方が対象です。 ・染色体構造異常 夫婦どちらかの染色体の構造に異常があり、胎児にも受け継がれてしまう可能性がある場合です。構造異常とは、染色体の形が変わっていたり、他の染色体とくっついていたりする状態を指します。 胎児の両親が構造異常のある染色体を持っている場合、胎児にも染色体異常が現れることがあり、流産につながるケースもあるのです。 詳しくは、実際の診察時に医師に相談して説明を受けましょう。 着床前診断については下記ページも参考にしてみてください。

出生前診断について

続いて、出生前診断について詳しく解説します。

出生前診断とは?

出生前診断とは、妊娠中に胎児の発育や異常の有無などを調べる検査を実施し、検査結果をもとに医師が行なう診断を指します。おもに母子の健康管理が目的です。広義でいえば、妊婦健診で行なうエコー検査や、胎児心拍数のモニタリングなども出生前診断にあたりますが、ここでは従来の検査よりもリスクが低くて精度が高いといわれている新型出生前診断(NIPT)についておもに説明します。 出生前診断を受けることで、胎児に染色体異常などがあるかを調査することが可能です。前もって胎児の状態や疾患があるかどうかがわかれば、胎児の状態に合わせた分娩方法を検討できます。 場合によっては、適切な治療を受けられる病院に転院したり、妊娠中から投薬や治療を行なったりすることができるでしょう。さらに、胎児が奇形や重篤な病気を抱えているかがわかるため、生まれる前から夫婦でよく話し合う時間を作ったり、生育環境も整えたりすることが可能です。

出生前診断の検査はおもに2種類

出生前診断の染色体異常を検査する方法には、「非確定的検査(非侵襲的検査)」と「確定的検査(侵襲的検査)」の2種類があります。  ・非確定的検査(非侵襲的検査) 非確定的検査とは、胎児に疾患の可能性がないか判断するための検査です。新型出生前診断(NIPT)は非確定的検査に当たります。 非確定的検査は採血や超音波を使って行なうため、母体への負担が少なく、流産のリスクを減らせるというメリットがあります。  一方で、染色体に異常性が見られたとしても診断が確定されないため、別途確定検査を受ける必要がある点に注意が必要です。 ・確定的検査(侵襲的検査) 確定的検査とは、胎児に疾患があるかどうかを確認するための検査です。この検査のみでどのような疾患があるかを確定できる反面、母体への負担が懸念されます。 検査では、母親のお腹に針を入れて羊水や絨毛(将来的に胎盤になる部分)を採取するため、流産のリスクもあります。そのため、医療機関によっては最初に非確定的検査を推奨し、そこで胎児に疾患の可能性が認められた場合に確定的検査を行うこともあります。 

着床前診断と出生前診断の違い

着床前診断と出生前診断の違いについて解説します。

違い1:妊娠前か妊娠後か

着床前診断と出生前診断の大きな違いは、検査の実施タイミングが妊娠前か妊娠後かという点です。 着床前診断は、妊娠前、つまり体外受精で得られた受精卵を子宮に移植する前に受精卵の検査を行ないます。例えば、流産を何度も繰り返している場合は、この検査でその可能性を低減できるでしょう。 一方の出生前診断は、すでにお腹のなかにいる胎児の状態を確認するものです。生まれつきの障害や病気などがないかを把握したうえで、生育環境や治療法を準備するのが目的になります。 いずれの場合も、医者側から検査を受けるように強要されることはありません。

違い2:対象者

着床前診断と出生前診断では、診断を受けられる対象者も異なります。 着床前診断の対象は以下のとおりです。
  • 直近2回の体外受精・胚移植で妊娠しなかった
  • 妊娠で胎嚢を確認してから、2回以上の流産を経験している
  • 夫婦のどちらかが染色体の構造異常を有している
そして、出生前診断(NIPT)は次のような方が受けられます。
  • 夫婦のどちらかに染色体異常がある
  • 高齢妊娠である
  • 過去に染色体異常症にかかった胎児を妊娠・分娩したことがある
  • 胎児が重い疾患にかかる可能性がある

着床前診断・出生前診断の方法と流れ

着床前診断・出生前診断を受ける方法と、一連の流れについて解説します。

 着床前診断の方法と流れ

着床前診断は、次の流れで行なわれます。
  • 診察
  • 体外受精
  • 胚の検査
  • 胚移植
まず、医療機関で医師による問診や、夫婦の染色体検査などを実施します。診断を受ける条件に該当するかどうかを判断するためです。同時に夫婦が診断を受けるかどうか自己決定ができるようにサポートも行います。 体外受精では、夫婦それぞれから卵子と精子を採取して、次のいずれかの方法で受精させます。
  • ガラス皿のなかに卵子と精子を入れ、自然に受精するのを待つ
  • 顕微鏡で見ながら、卵子のなかに精子を直接入れる
受精してできた受精卵を、細胞分裂によって胚盤胞と呼ばれる状態まで成長させたのち、胚盤胞の一部を採取し、検査機関へ提出します。 検査して、染色体異常のない可能性の高い受精卵を子宮に移植し、移植から約2週間後に妊娠したかどうかが判明します。

出生前診断の方法と流れ

出生前診断は、次のような流れで行なわれます。
  • 検査前の遺伝カウンセリング
  • 検査
  • 検査後の遺伝カウンセリング
検査前のカウンセリングでは、妊娠の経過や出産経験、検査することでどんな疾患がわかるかなどの説明を受けます。カウンセリングには約30分から1時間程度かかるため、十分な説明を受けたうえで検査を実施するかどうかを決められるでしょう。 出生前診断(NIPT)で陽性の場合は診断を確定させるために確定検査を受ける必要があります。 確定的検査には次の2種類があり、羊水検査や絨毛検査ではダウン症候群のような染色体疾患全般を調べることが可能です。いずれも採取から結果報告までに23週間がかかります。
  • 羊水検査
  • 絨毛検査
ただし、確定的検査では母体のお腹に針を刺して羊水や絨毛を取るため、破水や出血、子宮内感染、早産などのリスクをともないます。事前に夫婦間でしっかりと話し合い、納得したうえで決めることが大切です。

まとめ

着床前診断と出生前診断には、実施タイミングや検査内容、対象者などの違いがあります。 着床前診断では、体外受精させた受精卵が胚盤胞になった段階で一部を採取し検査することで、染色体に異常のない可能性が高い胚だけを子宮に戻すことが可能となります。 出生前診断(NIPT)では、お腹のなかにいる胎児の染色体異常を検査し、出生後の治療や準備、母子の健康管理に役立てます。検査を希望する夫婦は医師からの説明やカウンセリングを受け、十分に納得したうえで行なうことが大切です。 はらメディカルクリニックでは、患者様のお話に耳を傾け、心温かな医療を行なうことを心がけております。着床前診断・出生前診断について詳しい情報を知りたい方は、ぜひ以下よりご相談ください。
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