「AMHが低いので今後の治療はどうすればいいかのか」というご相談 【治療相談室より】
マネージャーの関口です。「治療相談室」を担当しています。
これは、まだ当院には通っていない方が医師の初診を受ける前の段階で不明点を解消されたい場合の相談窓口です。
ご相談の中で多いことの1つが「AMH低いので今後の治療はどうすればいいか」というものです。
当院は非常に多くの不妊治療をご用意していますが、その選択をAMHだけで行うことはありません。AMHは重要な数値ですが、他にも同じように重要なホルモン検査があります。これらを総合的にみながら治療を選択していくことをお伝えしています。
まずはAMHについて知ってください。
→AMHを検査する目的:卵巣内の卵子の在庫の指標を知るため
→AMHとは:抗ミュラー管ホルモン(アンチミューラリアンホルモン)のことで、AMHもホルモンの1種です。下の図の「前胞状卵胞*」の時期に卵胞から分泌されるため卵子在庫数の指標となります。AMHの数値が正常範囲内であればそれに見合った排卵誘発を選択することができます。*前胞状卵胞とはアントラルフォリクルとも呼ばれ、卵胞の赤ちゃんのことです。
→AMHが低いとは=卵子の在庫が少ない
・自然排卵しにくい(かもしれない)
・排卵誘発をしても充分な反応は見込めない(かもしれない)
・閉経が早い(かもしれない)
といった、卵子の数が少ないがための問題が生じる可能性があります。
さて、それでは本題に戻りまして、「AMHが低いので今後の治療はどうすればいいかのか」というご相談の際には次のようなお話しをしています。
■ご相談者が体外受精(顕微授精)をしている場合
体外受精では1個でも多くの胚盤胞を獲得することが早期妊娠に繋がります。1回の採卵で1個の胚盤胞では何度も体外受精を繰り返すことになり、費用も時間もかかるためです。そして1個でも多くの胚盤胞を獲得するには、1個でも多くの成熟卵を採取したいです。この時、「AMHが低いから刺激は無駄」とおっしゃる人がいますが、AMHが低いからこそ、その周期の「前胞状卵胞」は全て採取したいのです。「前胞状卵胞」はその周期に採取できなければ卵巣の中で消えていってしまいます。次のためにとっておけるわけではないのでAMHが低くても「前胞状卵胞」がある限りそれを全部成熟させて採取したいのです。理論的には。
1個でも多くの成熟卵を採取する場合に重要になるのが、卵胞を成熟させる土台となる【卵巣の機能】です。卵巣機能は月経2・3日目のFSH・LH・E2検査にて判定します。この数値はAMHと同様に大切です。AMHとFSH・LH・E2の値を総合的にみた上で医師は妊娠するための合理的な排卵誘発方法を提案します。そして、実際はここに「患者様の要望」が加わるのですが、それを割愛した場合には当院ではざっくりと以下のような方針になることが多いです。
<パターン1>
AMH低いが、 前胞状卵胞数多め |
FSH・LH・E2良い |
AMHは低くても今周期の前胞状卵胞数が多いのであれば今周期はチャンス!FSH・LH・E2も良いので刺激に対して卵巣機能も高いことが予想されます。なるべく多く採卵できる排卵誘発方法が合理的。 |
<パターン2>
AMH低いが、 前胞状卵胞数多め |
FSH・LH・E2よくない |
FSH・LH・E2が今回だけよくない場合は今周期はパスしカウフマン療法などを検討。恒常的によくない場合は刺激をしても卵巣が働きにくい状態なので無駄な刺激を避け低~中刺激にて排卵誘発を行う |
<パターン3>
AMH低く、 前胞状卵胞数少なめ |
FSH・LH・E2良い |
FSH・LH・E2は良いので卵巣の反応は期待できます。あとは、前胞状卵胞数に合わせた刺激量を選び少ないなりになるべく多くの採卵できる方法で行います |
<パターン4>
AMH低く、 前胞状卵胞数少なめ |
FSH・LH・E2よくない |
パターン2と同じ。
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■タイミング法、人工授精をしている場合
AMHが1以上あり、自然もしくはクロミッドなどにより月経14日目前後で排卵ができているのであれば3周期は今の方法を続けてみるのはどうでしょうか。3周期経過しても妊娠が成立していない場合は、タイミング法や人工授精では解決できない原因が考えられます。例えばそれは卵管内受精障害です。それでも年齢が34歳以下と若い場合はもう少しこの方法を続けてみる選択もあります。しかし年齢が35歳以上の場合は、今後は卵子の老化(時間と共に卵子に自然に生じる染色体の異常)の問題がありますので体外受精の準備をはじめることをお薦めします。まずは、体外受精がどんなものなのか知るために体外受精説明会から参加してみてください。
長文になってしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。排卵誘発や不妊治療には正解はないためこれはあくまでも当院の考え方であるという程度でご理解ください。
このようなご相談は医師としていただくことがベストではあるものの、忙しい先生を質問責めにもできませんから、ゆっくりご相談されたい時は治療相談室におこしください。