10月も終わりが近づき、肌寒い日が増えてきました。皆様お元気にお過ごしでしょうか。
今回培養部からは、卵子の質についてお話ししたいと思います。
不妊症の主な原因は“加齢”ですが、もっと詳しく言えば“加齢による卵子の質の低下”です。では卵子の質はどうしたら良くなるのか…
不妊治療をされている患者様はもちろん、我々培養士にとっても頭を悩ませることの一つです。
女性の一生において作られる卵子の数は生まれる前からすでに決まっており、生まれてからそれが増えることはありません。女児が胎内にいるとき卵子の元となる卵母細胞が作られ始め、ピークは妊娠5か月頃でその数は600~700万個に達します。そこから急速に減少していき、出生時には200万個、排卵が起こり始める思春期頃には30万個にまで減少します(この卵子の急激な減少のメカニズムは解明されていません)。37歳を過ぎるとその数は25000個まで減少し、50歳前後で1000個以下となり閉経を迎えます。これらのうち、生涯にわたり排卵する数はわずか400~500個(1%以下)です。
では、周期ごとの卵子数の変化を見ていきます。毎月1000個ほどの卵胞が発育し始め、3か月ほどかけて成熟していきます。排卵の際は、そのうちの一番質の良い卵子が選ばれるとは限らず、その月経周期に一番早く大きく育った卵胞が1個排卵し、残りの卵胞は卵巣内で吸収され消滅していきます。つまりそれだけの数の卵子が毎月なくなっているということになります。
それぞれの卵子は卵胞発育が開始するまでは、第一減数分裂の途中で停止しています(=受精の準備が完了していないということ)。母体年齢の加齢に伴い卵の数がどんどん減っていくことに加え、排卵までのこの長い停止期間が染色体異常の増加に関連しており、その結果卵の質が低下すると考えられています。
以上のことから、卵子の質を良くすることは非常に難しいことなのです。ですが、これ以上質を下げないように生活面から改善を試みることはできます。いわゆる健康的な生活というもので、自分に合った睡眠時間・バランスの良い食事・適度な運動を心掛け、またそれを日々持続して行うようにしてください。また、一番大切なのはストレスをなるべく溜めないこと。何事も、ストレスを溜めて体に良いことはありません。悪い方向悪い方向に考えすぎず、リラックスした生活ができるといいですね。