こんにちは。
今回のコラムの担当は培養部です。
当院では、採卵当日のとれた卵子の個数や、精子の状態により大きく分けて4種類の受精の方法があります。まずは、自然な形での受精を期待するコンベンショナルIVF、精子を一匹つかまえて針で直接卵子内へ注入する顕微授精、コンベンショナルIVF後に顕微授精を行うレスキュー顕微授精、とれた卵子を2グループにわけてそれぞれコンベンショナルIVFと顕微授精を行うスプリット顕微授精という方法があります。
今回は、よく質問を受けます「レスキュー顕微授精とは何か」というお話をさせて頂きたいと思います。
レスキュー顕微授精とは、コンベンショナルIVF後の卵子に精子の侵入がみられない場合、顕微授精を行う方法です。
では、われわれ胚培養士は精子が卵子に侵入したかどうか、どのように判断していると思われますか?
答えは第二極体と呼ばれる細胞が放出されているかどうかを確認しています。
卵子は精子が侵入すると、第二極体と呼ばれる細胞を放出し、減数分裂を再開し、受精へと続いていきます。
よって第二極体を放出している卵子に関しては精子が侵入していると判断でき、受精が起こる可能性がきわめて高くなります。
つまりこの第二極体が見られない卵子は精子が入っておらず、受精が起こらない可能性が高いためレスキュー顕微授精の対象となってきます。
このレスキュー顕微授精には、メリットとデメリットがあります。
メリットは、体外受精によって精子の侵入が確認できなかった卵子に顕微授精を行うことで、受精する可能性を高めてあげることです。
また、はじめから顕微授精を選択するのに、抵抗がある患者様に関しても有効な方法と考えられます。
一方、デメリットとしては、精子が侵入しているにもかかわらず、第二極体の放出がみられず、レスキュー顕微授精を行ってしまうことにより1つの卵子に2匹以上の精子が入ってしまう多精子受精を引き起こしてしまうことです。これはレスキュー顕微授精特有のデメリットです。
また、レスキュー顕微授精とは、コンベンショナルIVF後に顕微授精を行うことですので必然的に顕微受精のデメリットである、受精させる精子を人為的に選択している、針を刺す刺激に卵子が耐えられず変性してしまう、受精が起こらない未成熟卵子だった場合、顕微授精自体を実施できないなども含まれてしまいます。
当院では、レスキュー顕微授精は、採卵の当日に行っていますが、なかには採卵の翌日に行う施設もあります。
そのためレスキュー顕微授精の成績は各施設でばらばらです。
まずはレスキュー顕微授精のメリット、デメリットを理解して頂いた上で、採卵の当日に受精方法などご相談させていただきながら納得のいく治療を行っていけるように努めさせていただきます。