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ICSIの歴史

こんにちは。培養部です。 日に日に春めかしくなってきましたが、まだまだ朝晩は冷え込みが厳しく、体調管理には気を付けていきたいですね。

さて今回は顕微受精についてお話させていただきたいと思います。 顕微授精とは一般的な体外受精(コンベンションナルIVF)では受精しないまたはしづらい方を対象に行っている受精方法です。重度の乏精子症、精子無力症、奇形精子症や精子死滅症など精子の数、運動性、精子の形態に問題がある方や、コンベンショナルIVFでは受精障害を繰り返す症例、無精子症の方で精巣内精子採取法(TESE)や顕微鏡下精巣精子採取法(MD-TESE)によって採取された精子を受精させる場合に適応となります。 顕微授精法にはいくつかの種類があり、透明帯開孔法、囲卵腔内精子注入法そして卵細胞質精子注入法(ICSI:Intra cyotoplasmic sperm injection)があります。現在ではICSI以外の方法は、受精率がICSIより劣る為、あまり使われなくなってきました。 ご存知の方がほとんどだと思いますが、ICSIは正常な形態の精子を一つピックアップして、卵子の中に直接注入するという手法です。精子が卵子に到達、吸収されるまでの過程をスキップできるという画期的な手法です。テレビなどでもICSIの動画を目にする機会も多いので、高度不妊治療と呼べばこの手法をイメージされる方も多いのではないでしょうか?

実はICSIによって人間の赤ちゃんが誕生してから20年あまり経過していますが、その歴史はハムスターを用いた実験から始まりました。 1976年、ハムスターの卵子内に直接精子を注入すると、精子の核が自然な受精と同様に前核と呼ばれる構造へ変化する事が柳町隆造博士らにより発見されました。これがICSIの臨床応用のさきがけとなっています。

さらにその発見から12年後、1988年にベルギーにてヒトへの応用が行われ、ヒトの精子と卵子においても正常な受精が起こる事が発見されました。そしてそのさらに4年後の1992年、同じくベルギーより、世界で初めてICSIによる妊娠出産報告例が発表されました。論文検索サイトで調べたところ、現在この論文の引用数は2000を超えており、どれだけのインパクトを世界に与えたのかを物語る数値となっています。

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