こんにちは。7月に入り日に日に暑さも増し、夏らしくなってきましたね。
今回のコラムは培養部が担当させていただきます。
さて院長のブログにもありましたが、我々培養部も生殖バイオロジー東京シンポジウムに参加し、卵子の老化についての研究発表を数多く聞く事が出来ました。
なかでも老化が卵子にどんな変化を与えるかについての発表が多く、印象に残りました。
母体の加齢に伴って胚の染色体異常率が上昇することは良く知られています。その原因の一つとして、卵子の中にある染色体の分離がうまくいかない事が挙げられます。
卵子は成熟卵に成る過程で、染色体の数を半分にさせます。染色体の分離が起こる際には、染色体同士を束ねるタンパク質(コヒーシンと呼びます)が重要な働きをしています。このタンパク質が劣化してしまうと分離がうまくいかず、異数体(染色体の数的なアンバランスで染色体異常の一つ)になってしまう原因となるようです。もちろん年齢が上昇したとしてもすべての卵子がタンパク質の機能的、質的な異常を持っているというわけではありません。40歳以上の方の生児出産率は10%以下と言われていますが、質の良い卵子に出会うことが出来れば、赤ちゃんを授かることが可能です。
基礎的な研究の積み重ねから、老化卵子の中でどんなことが起こっているのかが少しずつわかってきました。患者様に還元できるような知識や新しい技術があれば、当院でも積極的に取れ入れて、実践していきたいです。