卵を培養する培養液について
こんにちは、培養部です。
師走の候、寒さも本格的になってまいりましたが、寒空の街に栄えるイルミネーションはとても綺麗ですね。
さて、今回のコラムでは患者様から大切にお預かりしている卵を培養する培養液について紹介させていただきます。
培養液は卵が凍結・移植に至るまでの発育に直接的に関わる重要な培養環境の1つで、卵の栄養素を含みます。
主に使用されている培養液にはシーケンシャルメディウム(two-step型培養液)とシングルメディウム(one-step型培養液)があります。
・シーケンシャルメディウム(two-step型培養液)
卵は受精後から4~8細胞期までは主に母由来の力を使ってピルビン酸と乳酸を栄養に発育し、8細胞期以降は卵自身の力で発育するようになり、グルコースを栄養にします。生体内でも、卵管液にはピルビン酸と乳酸、子宮液にはグルコースが高濃度で含まれています。
これらの生態環境をモデルに開発され、培養前期と後期で分けて使用する1対2種類の培養液がシーケンシャルメディウムです。
・シングルメディウム(one-step型培養液)
「卵は発生段階に応じて自分自身に必要な成分を選択し利用することができる」という考えから開発された、受精卵から胚盤胞までの培養に対応した培養液がシングルメディウムです。
シングルメディウムでは培養途中での培地組成の変更がないため環境変化によるストレスが少ないというメリットがあります。また、受精卵から胚盤胞までの培養を行うことができるため、培養液の交換をせずに胚盤胞まで培養することが可能といわれています。
当院では慎重な検討を重ねた結果、シングルメディウムを採用していますが、培養液内では卵が発育時に産生する老廃物や、培地成分の分解による毒性物質の蓄積が起こるため、当院では培養1日目と3日目に培養液の交換を行っています。
培養液は多種多様な種類が開発・販売されており、各施設でも様々な検討が行われ、学会でも毎回活発な発表・討論が行われています。当院でも今後もより良い培養液と培養方法の検討を十分に行って参ります。