DHEAと不妊
こんにちは。培養部です。
だんだんと夏の厳しい暑さも収まり、秋の気配を感じられるようになってきました。
本日はDHEAについてお話をさせていただきたいと思います。名前は似ていますが肝油などに多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とは別物です。
DHEAはデヒドロエピアンドロステロンの略称で、副腎や卵巣から分泌されるホルモンの一種です。日本では医薬品指定物質ですので、購入が難しく、海外からの個人輸入が一般的な入手方法です。サプリメントとして購入する際、値段は約1000~5000円くらいで、用量は25mgくらいから始めるのが一般的です。
DHEAは弱い男性ホルモン作用を持つており、卵胞の細胞でテストステロン(男性ホルモン)やエストラジオール(女性ホルモン)の元になります。その事からマザーホルモンとも呼ばれています。女性ホルモンばかりに目がいってしまいがちですが、男性ホルモンは排卵誘発剤に反応する前の小さな卵胞の発育に重要である事が報告されています。
またDHEAはミトコンドリアでのエネルギー生産を制御しているタンパク質の働きを強める機能を持ちます。これらの事からDHEAが卵胞内のホルモンやエネルギーの産生に重要であると言うことが考えられてきました。
ところが他のホルモンと同様、DHEAは加齢に伴い分泌量が低下してしまうのです。DHEAは20歳をピークに徐々に分泌量が低下し、40歳になる頃にはピーク時の半分しか分泌されなくなってしまいます。その事からDHEAを補充すれば卵胞の発育能が上がるのではないかという考えが生まれてきました。興味深いことに4~5ヶ月のDHEAの摂取により、血中AMH量の増加、採卵数、胚の質や妊娠率が有意に増加するという臨床学的な報告があります。
しかしながらホルモン剤=細胞に直接影響を与える物質ですので危険な面もあります。乳がんなどの性ホルモンにより増殖するタイプのがんには悪影響を及ぼします。またPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の患者様の場合は、DHEAの持つアンドロゲン作用により、病態を悪化させてしまう可能性があります。副作用としてにきび、多毛や脂汗、声が低くなるなどの症状が見られることもあります。
サプリメントを希望の際には適応判断のため、医師にご相談ください。