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【不妊治療】男性側の原因や種類について|男性不妊になりやすい人の特徴や保険についても解説

不妊は、女性だけの問題と考えられがちですが、不妊症の48%は男性側にも原因があります。2017年に実施された世界保健機関(WHO)の調査では、不妊症のうち、男性・女性ともに原因がある割合が24%、男
性のみに原因がある割合が24%との結果でした。

不妊原因は、女性が65% 男性が48

引用:https://www.fukuda-wclinic.com/first/cause.html

この記事では男性不妊に着目し、男性不妊になりやすい人の特徴や原因・種類を解説します。また、20224月から不妊治療が保険適用となりましたが、男性不妊にも適用されるのか、詳しくご紹介します。

男性不妊になりやすい人の特徴

不妊治療には時間を要することも多く、時間が経つにつれて妊娠確率が下がってしまいます。したがって、不妊の可能性を感じたら、できるだけ早く検査を受けることが重要です。

冒頭のとおり、不妊に悩むカップルの約半分は男性側にも原因があります。しかし、「不妊症は女性特有のもの」というイメージが強く、男性側が検査を受けるまでのタイムラグが生まれてしまうケースも少なくありません。

この章では、見た目やこれまでの経験、生活習慣など、男性不妊になりやすい人の特徴をご紹介します。以下の特徴に当てはまるようなら、検査を受けるか検討したほうがよいでしょう。

【見た目編】男性不妊になりやすい人の特徴

精子は精巣(睾丸)でつくられます。低い温度のほうが精子はつくられやすいため、睾丸や陰嚢は体温よりも低く保たれている必要があります。そのため、睾丸や陰嚢はおなかの中ではなく外にでているのです。

睾丸や陰嚢の状態が以下に当てはまる場合は、男性不妊の可能性を疑うことができるでしょう。

  • 睾丸が小さい人、あるいは、思春期の頃より小さくなった人
  • 睾丸を触るとふにゃふにゃと柔らかく張りがない人
  • 陰嚢(睾丸の袋)の表面に血管が多くある人
  • 睾丸の位置が陰嚢内の上方や鼡径部にある人

睾丸がもともと小さかったり、柔らかい人は、精巣で精子がつくられていない可能性があります。最近になってこのような変化を感じる人は、精子所見が悪化しているおそれがあります。

また、陰嚢(睾丸の袋)の表面に血液が多くある人は、精索静脈瘤の疑いがあります。これは、静脈が逆流し、睾丸の周りに滞留する状態のことを言います。血液は体温と同じ温度なので、血管が睾丸の上にあると温度を低く保てませんので精子がつくられにくくなり、男性不妊の原因になります。

また、睾丸の位置が陰嚢の上方や鼠径部に近いところにある人も、睾丸の温度が高くなりがちです。こういった人は、造精機能が衰える可能性があります。

【手術歴・病歴編】男性不妊になりやすい人の特徴

これまでの手術や病気によっても、男性不妊につながるといわれています。

  • 鼡径ヘルニアの手術を幼少期に受けた人
  • おたふく風邪に罹患後、精巣炎で睾丸が腫れた人

精子は鼡径管を通りますが、鼡径ヘルニアの手術時に、鼡径管が一緒に縛られてしまうことがあります。これも男性不妊の原因の一つです。

また、大人になってからおたふく風邪にかかり、精巣炎で睾丸が腫れた人も男性不妊を疑いましょう。おたふく風邪以外にも、高熱が続いて睾丸近くに痛みを感じた経験のある人も同様です。

【生活編】男性不妊になりやすい人の特徴

睾丸の温度が高くなると、精子がつくられにくくなるため、男性不妊を引き起こす原因となります。したがって、以下のような習慣のある人は注意しましょう。

  • いつもピタッとした下着やズボンを着用し、睾丸を締め付けている人
  • サウナを頻繁に利用する人、長風呂の人
  • 膝の上でPC作業をすることが多い人
  • 火を扱う調理の仕事をしている人

男性不妊の種類と原因について

男性不妊は、大きく3つの種類に分かれます。どのような種類があるか、原因併せて見てみましょう。

造精機能障害

造精機能障害とは、睾丸の機能異常により精子がつくり出せない状態のことです。造精機能障害は男性不妊の80%を占めています。精子がいない・数が少ない状態や、運動性の悪い精子、奇形の精子が多く見られるのが特徴です。

睾丸上部にある血管が肥大する精索静脈瘤や、抗がん剤や放射線治療によるものなど、原因はさまざまです。しかし、多くのケースでは原因不明といわれています。

原因不明の場合でも、治療の余地がないわけではありません。女性と同様、男性も年齢が上がるにつれて造精機能が低下し、不妊の原因となりますので、早めに男性不妊の専門医がいる泌尿器科外来を受診しましょう。

専門医の指導の下で、生活習慣を見直し、抗酸化作用のあるサプリメントや漢方を使用した治療も有効的です。はらメディカルクリニックでは経験豊富な専門医による男性不妊外来を用意しています。

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性機能障害

性機能障害は次の2つに分かれます。1つは勃起が起こらない、勃起した状態を維持できないために性行為がうまくいかない勃起障害。もう1つは、勃起はするものの射精ができない射精障害です。

勃起障害や射精障害は、心因性のものが多いといわれています。勃起は副交感神経が優位のリラックスした状態が起こりやすいものですが、性行為そのものにプレッシャーを感じ、勃起障害を引き起こしていることも少なくありません。女性の排卵日に合わせて性行為をしようなどと意識すると、うまくいかないというケースも多くあります。

対策としては、勃起不全(ED)の治療薬を気軽に試してみることをおすすめします。心因性の原因は、成功体験の積み重ねで改善することが多いと言われています。現在、勃起不全(ED)の薬剤は色々ありますので、状況に合わせて専門医と相談の上で決めましょう。健康保険の対象です。

関連記事:セックスレスが不妊治療にもたらす影響|原因や対処方法を紹介

また、射精障害の中で、逆行性射精といい、本来射精時に閉じている膀胱頚部が開き、精液が膀胱へ逆流してしまう状態もあります。これは、射精感があるため、自覚症状がありませんが、精液検査の際に精液量が1CC以下など、非常に少ない場合に疑われます。

精路通過障害

精路通過障害とは、睾丸では精子がつくられているにも関わらず、射精までの経路に何らかの異常がみられ、精子が出ない状態です。

精液は前立腺液や精嚢液などが混ざったものなので、精路通過障害だとしても射精ができます。そのため、精液検査をするまでは精子が出てきていないという自覚がありません。

原因には、先天性のものや前述した逆行性射精、鼡径ヘルニアなどの手術によって精管が塞がっていることなどが考えられるでしょう。

男性の不妊治療の検査方法と治療方法

男性不妊の検査方法と治療方法を詳しく解説します。

検査方法

基本的に、男性不妊ではまず精液検査を行ないます。前述したように、一見、普通に射精できていたとしても、精子が出ずに妊娠が成立しなかったというケースも少なくありません。精液検査によって精液の量や精子の数、運動率などを確認することは、不妊治療を進めるうえで重要です。

精液検査の結果は、体調によって変わることがあります。そのため、1回目の検査が不良の場合には、もう一度検査をしましょう。精子の採取は自宅か医療機関内の採精室で行ないます。精液を自宅で採取する場合は、採精から3時間以内の精液であれば、検査結果に影響はありません。

精液検査の結果判定の指標になるのが、WHOの示す基準値です。基準値といっても平均値などではなく、妊娠可能な最低ラインを示しているため、この数値を上回れば確実に妊娠が可能というわけではありません。

また、現在は男性不妊が増加しているため、WHOの示す基準値は下記に修正されました。しかし、妊娠できる基準が下がったわけではないため、当院では妊娠に必要な精子基準を独自に設けています。

WHOの示す基準値は、以下のとおりです。

精液量 1.4ml
精子濃度 1,600万/ml
総精子数 3,900万/射精
総運動率 42%
正常精子形態率 4%

はらメディカルクリニックで設定している自然妊娠が可能な基準値は以下のとおりです。

精液量 2.0ml
精子濃度 2,000万/ml
総精子数 4,000万/射精
総運動率 50%
正常精子形態率 4%

また、男性側の検査としては、精液検査以外にも、触診・エコー検査・遺伝子検査・ホルモン検査などが用いられます。

治療方法

男性不妊の治療には、以下のような方法があります。

クロミフェン法

クロミフェン法とは、ゴナドトロピン製剤という薬剤を使ってエストロゲンを低下させ、精子がつくられるよう促す治療です。

間脳下垂体系の内分泌異常が起因して、乏精子・精子無力症などの造精機能障害を引き起こしていると考えられる場合に適応されます。また、抗エストロゲン剤の造精機能に対する作用も期待できます。

一日1錠を服用して効果を待つ形で、46ヵ月続けるのが一般的です。クロミフェン法では女性ホルモン作用を有する薬剤を使用するため、6ヵ月以上もの長期間の服用により精細胞を障害するおそれがあります。その他、目のかすみや胃腸障害が見られる場合もあるでしょう。

クロミフェン法について、詳しくは以下のページをご覧ください。

GnRH療法

GnRH療法とは、GnRH(ゴナドトロピンリリーシングホルモン)かあるいは類似薬を、持続的もしくは少量投与することによって、ゴナドトロピンの分泌を促進する治療方法です。この治療法は、クロミフェン法と同様に、間脳下垂体系の異常によって精子をつくる機能が阻害されている状態の人に対して有効と考えられています。

この治療の有効性は、男性不妊スクリーニング検査の結果を見て判断されます。ゴナドトロピンへの反応性は個人差が大きいため、ホルモンの数値を見ながら使用量や投与期間を決めていくのが基本です。

場合によっては、下垂体の機能が低下する副作用が見られることがあり、そういった場合には治療が中止されます。

GnRH療法について、詳しくは以下のページをご覧ください。

下垂体ゴナドトロピン療法

下垂体ゴナドトロピン療法とは、ゴナドトロピンを補充して精子の産生を促進する治療方法です。低ゴナドトロピン性性腺機能低下症といわれるホルモン欠損が原因で、造精機能の低下が見られる場合に適応となります。男性不妊の薬物療法のなかで、特に効果が高い治療方法といえるでしょう。

ゴナドトロピンは強いFSH作用があります。FSHは卵胞刺激ホルモンといわれ、精子の産生を促す一方で、睾丸の委縮が起こることもあるため長期間の連用は避けなければいけません。その他に、女性化乳房などの副作用が認められるケースもあり、こうした副作用が見られる場合には治療は中止となります。

下垂体ゴナドトロピン療法について詳しくは以下のページをご覧ください。

【男性】不妊治療の費用は保険適用になるのか

結論からお伝えすると、スクリーニング検査以外の男性の不妊治療の費用には保険が適用されます。

2022年4月から、不妊治療が保険適用になったというニュースが注目されましたが、男性不妊に関しても保険適用の範囲が広がりました。精液の状態を改善するための薬物療法に加えて、勃起障害(ED)の薬剤も保険適用になります。

また、精液中に精子が認められない無精子症や、射精障害、重度の逆行性射精の場合に必要となる精巣(睾丸)から精子を採取する手術も保険適用になります。手術の場合には、民間の医療保険が対象になることもあります。ただし、男性の不妊治療の中でスクリーニング検査は保険適用外のため自由診療となります。

男性不妊の治療費に関して、詳しくは下記ページをご覧ください。

まとめ

不妊の原因はどうしても女性側にあると思われがちですが、実際には原因の半分は男性側にもあります。男性不妊に関しては、過去の病気や手術で不妊を引き起こしているケースもあれば、生活習慣によるもの、心因性のもの、原因不明のものなどさまざまです。

2022年4月から男性不妊の治療も保険適用の範囲が拡充し、高度な不妊治療も保険適用となりました。

不妊治療は、男性側の状態により妻が受ける検査や治療が変わってきます。先に女性側のみ不妊治療をはじめたのに、その後の精液検査の結果により、女性側の治療が大きく変わり、それまでの時間と費用が無駄になったということもよくある話です。

不妊治療は夫婦の治療です。最短で妊娠するために、男性側の検査は女性の検査と同じタイミングがそれ以前に行ってください。はらメディカルクリニックでは不妊治療をする前に検査のみ実施し、結果はレポートとしてお送りすることができます。

女性側も男性側も、加齢にともなって妊娠確率が下がってしまう傾向にあるので、早めの検査・治療をおすすめします。

不妊治療に関するご相談は、以下からご利用ください。

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