不妊治療に初めて行くタイミングとは?不妊の原因や知っておきたい基礎知識について
「なかなか赤ちゃんができない」「もしかしたら不妊なのかもしれない」と感じて焦っていませんか。いざ不妊治療を始めようと思っても、いつどのようなタイミングで始めるか迷ってしまうことがあるかもしれません。
不妊治療を始めるとなると、心や身体に大きな負担がかかる可能性があります。
この記事では、不妊治療を始めるタイミングや受診に必要なものを解説します。不妊に考えられる原因も詳しく紹介しますので、不妊治療を検討している方はぜひ参考にしてください。
不妊治療へ初めて行くタイミングがわからない
不妊治療を始めるタイミングに、明確な決まりはありません。「年齢的に不安なので早めに不妊治療を始める」「1年は夫婦だけで頑張ってみる」など、不妊治療の考え方は家庭によってさまざまです。
とはいえ、目安を知りたいと思う夫婦も多いでしょう。そこでここからは、初めて受診するときのタイミングや注意点を解説します。
初めての受診タイミングは「もしかしたら不妊?と思ったら」
「タイミングを計っているのになかなか妊娠できない」「もしかしたら不妊かもしれない」、そう思った時が不妊治療をはじめるタイミングです。
不妊治療にかかる時間には個人差がありますが、長期間の治療が必要となることも少なくありません。年齢によっては、早期に不妊治療を開始しなければ、さらに妊娠しにくくなってしまうことも考えられます。
そのため、病気や年齢を含めた不安要素がある場合は、できるだけ早めに専門家や産婦人科医に相談することが大切です。また、もし妊娠の妨げとなる子宮の病気などがある場合は、早めに検査して治療を始めましょう。
なお、加齢により妊娠が難しくなるのは、女性だけではありません。男性の加齢も妊娠しにくくなる要因の一つとして認識しておきましょう。
初診日は生理中でもOK?
不妊治療を検討していても、仕事などの都合でいつでも受診できるわけではありません。せっかくの初診日に生理が重なると、受診を躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。
医療機関によっては、生理の日には超音波検査をしないという所がありますので、そのような場合には初診日を変更した方が良いです。
当院の場合は生理中であっても超音波検査を含め基本的な検査はすべて可能ですのでご来院いただいて構いません。
不妊治療は、時間との勝負です。当日できない検査があっても、次回以降で対応してもらえるため、できることから進めていくことをおすすめします。
そもそも不妊とは?
そもそも不妊とは、いつからどのような状態のことを指すのか、わからない人も多いでしょう。日本産科婦人科学会は、不妊の定義として「妊娠を望む健康な男女が避妊をせず性行為をしているにも関わらず、一定期間妊娠しないもの」としています。
一定期間は、およそ1年を目安としているため、妊活から1年を過ぎて不妊治療を検討する夫婦が多いようです。長期間妊娠できなくても「忙しくてタイミングを取れていない」「正しい排卵日を把握できていない」という場合は、本格的な妊活により短期間での妊娠が望めるケースもあります。
また、一定期間が1年以下のケースとして、自分達が不妊かもしれないと感じている場合や、女性が35歳以上の場合には早期治療開始が望ましいです。
妊娠する確率は年齢を重ねるごとに下がる傾向があり、「焦らなくても良い」「貯金が貯まってから始めよう」と治療を先送りにしていると、妊娠できなくなってしまう可能性もあります。このようなリスクを考えると、少しでも早く不妊治療を始めるべきといえるでしょう。
2022年4月から不妊治療が保険適用され、費用負担は大幅に軽減されました。不妊かもしれないと感じたときは、一度専門のクリニックを受診したり、産婦人科へ相談したりすることをおすすめします。
不妊のおもな原因
不妊の原因は夫婦によってさまざまです。また、検査をしても不妊の原因がわからないケースも珍しくありません。検査の結果、排卵や子宮、精子などに問題がある場合は、妊娠に向けて治療を始めることになるでしょう。
ここからは、不妊のおもな原因を解説します。なお、不妊の症状や正しい不妊治療の方法については以下の記事に紹介していますので参考にしてください。
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不妊症とは|症状や男女別の原因を知り正しい不妊治療を
女性側のおもな原因
なかなか妊娠できないとなると「しっかり排卵できているのか?」「子宮の病気ではないのか?」と不安になることもあるでしょう。女性側に考えられる、不妊のおもな原因は以下のとおりです。
- ホルモンバランスの異常による「排卵因子」
- 精子が卵子に到達しない「卵管因子」
- 子宮の問題が原因の「子宮因子」
- 粘液の不具合による「頸管因子」
上記のような因子により、月経の間隔が長くなったり、短くなったりする症状がでます。また、生理痛がひどく経血の量が異常になることもあります。もし、月経や生理痛に違和感がある場合は、早期に検査することをおすすめします。
また、検査により以下のような異常が診断されます。
- 卵管通過障害
- 排卵障害
- 子宮内腔異常
卵管通過障害や排卵障害、子宮内腔異常などは検査で判明しますが、卵子の質や受精障害などを調べることはできません。そのため、不妊の原因は不明として診断されることも珍しくありません。
男性側のおもな原因
不妊の原因は女性側だけにあるとは限りません。しっかり検査して、問題がある場合は一緒に検査を進めましょう。男性側に考えられる不妊のおもな原因は以下のとおりです。
- 勃起障害などの「機能不全」
- 精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」
- 精子を体外に排出しにくい「精路通過障害」
- 精巣や前立腺に問題がある「副性器障害」
男性不妊の原因を探るためには、精液検査で精子の液量・濃度・奇形率・運動率を調べる必要があります。場合によってはホルモン検査も行ないます。
検査によりなんらかの異常が見られた場合は、治療としてホルモン療法・内服治療・漢方治療などを行ないます。精索静脈瘤や閉塞性無精子症の場合は、手術が有効なケースも少なくありません。
これらの治療や手術は、問題を検査で明らかにしなければ行なえません。なかなか妊娠できない場合は男性にも原因がある可能性を考慮し、早期に検査を受けることをおすすめします。
不妊治療へ初めて行くときのQ&A
不妊治療に初めて行くときは、なにかと不安も多いでしょう。そこでここからは、不妊治療の受診に必要なものや心構えについて解説します。
必要なものは?
受診するクリニックにもよりますが、不妊治療へ初めて行くときは以下のものを用意するとよいでしょう。
- 夫婦の健康保険証
- 問診表
- 基礎体温表
基礎体温表はつけていればで構いません。また、クリニックによっては待ち時間が長い可能性があります。問診票は、自宅からダウンロードできたり、Webフォームから送れたりするため、スムーズな受診のために活用してみてください。
過去に不妊に関する検査を受けたことがあり、感染症・甲状腺などの検査結果を持っている方は、そちらも持参するとよいでしょう。
また、治療前には夫婦でライフプランの相談をしておくことをおすすめします。妊娠しやすい身体をつくるためには、日常生活の見直しも大切です。夫婦で協力して不妊治療に臨むためにも、あらかじめ話し合いをしておいたほうが治療をスムーズに進められます。
何を聞かれる?
不妊治療と聞くと、ハードルが高いと感じるかもしれません。初診時にどのようなことを聞かれるか確認しておくと、ある程度の心構えができるでしょう。
受診するクリニックにもよりますが、以下のようなことを聞かれることが多いため、答えられるように準備しておくことをおすすめします。
- 生理周期や月経日数
- 初潮年齢や最終月経月
- 過去の妊娠・出産・流産・中絶歴
- 過去の治療歴や持病
- アレルギーの有無や飲んでいる薬
- 希望する治療
特に、希望する治療は夫婦の意見をしっかり伝えましょう。
夫婦で行くべき?
不妊治療をするための医療機関には夫婦で行くべきかどうかについては、医療機関によりルールが異なります。当院の場合、初診日は夫婦揃って受診することをお勧めしています。
理由としては、初診日に男性側の検査を済ませることで治療が速やかに進むということと、医師からの説明を夫婦そろって受け、二人がその説明を理解したうえで治療を始めることが理想的だからです。
また、事実婚など婚姻関係になんらかの事情がある場合は、戸籍抄本などの書類を持参するとともに、二人での受診が必須になります。
当院では、最短で妊娠するために、男性側、女性側それぞれに治療を開始するにあたって必要な検査が設けられています。どちらか一方ではなく夫婦二人が当事者となって治療を進めていきましょう。
また、不妊治療の受診を続ける中で、夫婦間で不妊治療に対しての考え方にギャップが生じるケースもあります。「ここまでして子どもがほしいのかどうかわからない」という気持ちになることもあるかしれません。そういった場合には、受診や検査を重ねながら、常に夫婦で話し合うのが望ましいといえるでしょう。
妊娠までの費用はどれくらいかかる?
妊娠までかかる費用は人それぞれです。受ける治療や、その期間によっても大きく異なります。また、長く治療を行なっても、夫婦の望む結果にならないこともあります。
そこでここからは、タイミング療法・人工授精・体外受精にかかる1周期の費用を紹介します。
・タイミング療法の場合
タイミング療法の場合は、排卵日の目安を調べて、最も妊娠しやすいタイミングで夫婦生活を行ないます。排卵誘発剤の相談や薬の処方のための診察、排卵日を特定するための診察が必要です。
また、排卵・黄体機能・内膜厚を調べる検査などもあり、1周期の治療費合計は約6千円です。
詳しくは、タイミング療法のモデルケースでも紹介しています。
・人工授精の場合
人工授精を行なう場合は、排卵日や人工授精を実施する日を特定するためにまず診察を受けます。人工授精当日は、施術や注射、内服薬などに費用がかかるため、1周期の治療費合計は約1万3千円です。
詳しくは、人工授精のモデルケースでも紹介しています。
・体外受精の場合
体外受精の場合は、採卵に関するさまざまな処置が必要です。排卵を誘発して、排卵日を特定、採卵から培養へ、そして胚移植へとうつります。1周期の治療費合計は約20万円です。
詳しくは、体外受精のモデルケースでも紹介しています。
まとめ
「タイミングを計っているのになかなか妊娠できない」「もしかしたら不妊かもしれない」と悩んでいる夫婦は、少なくありません。不妊治療を開始すべき時期に正解はありませんので、考え込む前に不妊治療の医療機関に相談してみましょう。
不妊の原因によっては、少しでも早く治療を開始したほうが良いといえます。また、不妊治療にハードルを感じている夫婦もいるでしょう。不妊治療は2022年4月より保険適用されました。子どもを持ちたいという方々に対して有効で安全な不妊治療を保険で適用できるようになります。
妊娠への漠然とした不安や、不妊治療へのハードルを取り除くためにも、まずは夫婦で「自分達はいつまでに妊娠したいか」というのを話し合ってみてはいかがでしょうか。そしてその時期までに妊娠するためには、いつ頃から不妊治療をはじめるのがよいのかについても夫婦で話し合ってみましょう。
また、不妊治療をする前に検査だけを受けてみてから、その結果次第で不妊治療をはじめるかどうかを考えてみるというのもよいです。