染色体とは?
染色体とは、細胞の核のなかにある、さまざまな遺伝子が記録されている構造体のことです。性別を決定する「性染色体」とそれ以外の「常染色体」の
2種類あります。
染色体は
2本で
1対のペアになっており、父親と母親からそれぞれ
1本ずつ受け継ぎます。通常、染色体の数は
23対
46本で、常染色体
22対
44本と性染色体
1対
2本です。ヒトには約
37兆個の細胞があるといわれていますが、この細胞のそれぞれに
46本の染色体が含まれています。約
2万種類ある遺伝子はそれぞれの染色体に分配されており、どのくらいの遺伝子が含まれているかは染色体ごとに異なっています。常染色体の中でも
21番染色体、
18番染色体、
13番染色体の順で含まれている遺伝子数が少ないことが知られています。
染色体異常の種類
染色体異常は、「数的異常」と「構造異常」の
2種類に分けられます。
数的異常
染色体の数的異常は、正常な染色体数の数よりも増えたり減ったりしている異常のことです。増減の状態によって、次のように呼ばれています。
モノソミー:
2本でペアである染色体が
1本になっている状態
トリソミー:
2本でペアである染色体が
3本になっている状態
三倍体(
triploidy):各染色体が
3本あり、全体で
69本になっている状態
構造異常
染色体の構造異常とは、染色体の構造の一部が変化している状態を指します。染色体の一部の欠失や重複、転座(種類の異なる染色体間で染色体の一部を交換していたり、染色体の一部または全部が別の染色体にくっついている)など、正常な染色体とは異なる構造になっている状態が構造異常です。
構造異常が起きていても欠失・重複などの程度が微小な場合は、通常の染色体検査で構造異常があることを確認することができません。また、
NIPT(我が国の認可施設で行われている
NIPT)のように染色体の数だけを調べる検査では、染色体の構造異常を発見できません。
染色体異常の原因
数的異常の原因
染色体の数的異常が起こる原因の多くは、精子や卵子が作られる過程で起こります。精子と卵子の元となる細胞から
2回の減数分裂をすることで精子と卵子はそれぞれ
23本の染色体を持つようになります。しかし、染色体の分離が何らかの原因でうまく行なわれないと、染色体が多い、あるいは少ない精子や卵子が作られ、これらが受精と関わることで染色体の総数が
46本ではない受精卵となることがあるのです。
常染色体の数的異常が起こる確率は母体の年齢が上がると上昇していくことが知られています。また、染色体転座の構造異常をもつ人の場合、お子さんに常染色体の数的異常が起こる場合があります。しかし、常染色体の数的異常の多くは偶発的に起こるものであり、数的異常が起こらないようにすることは不可能です。そのため、健康的な生活を心がけていても誰にでも起こりうることです。
構造異常の原因
染色体構造異常の原因には、精子や卵子、受精卵の発生過程で偶発的に現れる場合と、両親のいずれかもしくは双方からの遺伝による場合の
2つが考えられています。発生過程で現れる原因の場合、数的異常のような突然変異であり、特定の原因は明らかになっていません。
親からの遺伝によって子どもの染色体に構造異常がある場合、母親か父親、または両者が子どもと同じ構造異常を持っている可能性があります。
染色体異常による影響
出産前後でのリスク
染色体異常をともなう妊娠は、分娩前に流産や子宮内胎児死亡になることが多い傾向です。気付かないうちに流産する「化学的流産」の原因も、染色体異常が関係していると考えられています。
また、分娩となった場合でも、赤ちゃんに先天性疾患(心疾患や精神発達遅延など)が生じたりする可能性があります。場合によっては、出生後に専門的な治療や発達支援が必要になることもあります。
染色体異常により引き起こされる疾患
染色体の数的異常が生じると、次のような疾患を発症する可能性があります。
常染色体の数的異常:ダウン症候群(
21トリソミー)、パトウ症候群(
13トリソミー)、エドワーズ症候群(
18トリソミー)など
※常染色体のモノソミーは遺伝子の欠失が多すぎるため、出生できません
性染色体の数的異常:ターナー症候群、クラインフェルター症候群など
また、染色体の構造異常では、欠失や重複などにより遺伝子の増減や分断がどの程度起こっているかによって現れる症状が異なります。例えば、ある酵素を作り出す遺伝子を含む染色体の領域に問題が生じた場合、酵素を作りにくい、または作ることができない症状が現れる可能性があるでしょう。