*これは、院長 宮﨑薫のブログ”note”の中から、不妊治療に関連する内容の中でアクセス数が多いものを抜粋しご紹介します。note で読む場合はこちら
はらメディカルクリニック院長の宮﨑薫です。
胚移植を複数回行っても妊娠継続にいたらない症例を反復不成功例といいます。今回は反復不成功例における「胚盤胞2個移植」の当院データについてご説明いたします。
<データ条件>
対象期間:2017年~2020年6月末
対象者 :反復不成功例における2個胚移植実施者
Good:胚盤胞4BB以上
Poor:胚盤胞4BC以下
着床率 :hcG 10以上が確認された周期数/移植周期数
妊娠率 :胎嚢確認できた周期数/移植周期数
流産率 :胎嚢確認後流産数/胎嚢確認できた周期数
<Good胚の考察>
当院で二個胚移植を行う主な基準は、複数回胚盤胞移植をしても不成功であった場合です。そのため、二個胚移植を経験されている患者様のデータを集計した場合、二個胚移植を経験していない患者様に比べ、Good胚の移植であっても着床率、妊娠率はあまり高くありません。しかし、そのような症例でも、二個胚移植を行うことで高い着床率、妊娠率が確認できました。
一方で、二個胚移植には多胎率が上がるというリスクがあります。Good x Goodの組合せでは、単一胚移植に比べてかなり多胎率が上がっています。そこで、Good x Poorという組合せにすることで、二個胚移植のメリットを残しつつ、多胎率の上昇を抑えることが出来ます。
続いて、胚盤胞4BC以下のPoor胚について。
<Poor胚の考察>
Poor胚を単一胚移植した場合の妊娠率は10%に満たないですが、Poor胚の二個胚移植を行うことで、20%を超える結果となっております。また、流産率も20%ほど低い結果となりました。Poor胚は単一胚移植に用いるよりも、たとえPoor同士の組合せであっても、二個胚移植を行う方が良いと考えられます。
<多胎妊娠のトラブル>
双子も可愛いと安易に考えがちですがさまざまな多胎トラブルがあります。
・母体に生じるトラブル
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症の発生頻度が上がります。また、帝王切開術や産後の異常出血の発生頻度も上昇します。切迫早産になりやすいため、長期の入院・安静が必要になる場合もあります。
・胎児に生じるトラブル
流産や早産のリスクが上昇します。胎児の発育遅れや低出生体重児(2,500g未満)、先天異常が多くなり、新生児の死亡率が高くなります。
日本産科婦人科学会では患者様に2個移植の希望がある場合には、女性の年齢が35歳以上、あるいは34歳以下の場合は2回以上の反復不成功例がある場合に2個移植を認めています。しかし、2個移植には「多胎」という大きな問題があります。移植胚数を何個にするのか、2個移植の場合はどの組み合わせが良いのか、正解はありません。
ご夫婦でしっかりと話し合いをして決めましょう。