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着床前診断 PGT

不妊症の検査・治療

着床前診断 PGTとは

着床前診断 PGT(Preimplantation Genetic Testing) とは体外受精で得られた胚盤胞を子宮に胚移植する前に、その胚盤胞の染色体を調べることで、妊娠率や出産率を高め、流産を減らすことを目的とする検査です。一方で、着床前診断 PGTをすることで全く流産しない、ということではありません。また、検査結果の解釈も難しい中で最終的にその胚を移植するかどうかの判断をすることになります。着床前診断をした方がいいのか?しないほうがいいのか?メリットとデメリットをよく理解して診断に進みましょう。この検査は日本産科婦人科学会の特別臨床研究として行われます。

着床前診断 PGTの対象者

次の3条件のうち、1つ以上を満たしている人

①胚移植後の不成功(胎嚢確認できない)が2回*以上ある
②(胎嚢確認後の)流産が2回以上ある
③夫婦のいずれかに妊娠に影響する染色体構造異常がある方(胚移植不成功回数や、流産回数は問わない)
*生涯2回という意味です。出産挟んでいても問題ありません。前施設の治療分も対象です。

着床前診断 PGTの目的

体外受精をしたのになかなか妊娠しない、流産を繰り返す原因を取り去るため

受精卵の染色体異常とは

人間の細胞には46本の染色体(DNAの集合体)があります。精子と卵子の元の細胞の染色体も染色体が46本です。その細胞が「減数分裂」をして染色体が半分(23本)の精子と卵子になります。そして、染色体が半分ずつの精子と卵子が受精を完了することで、受精卵の染色体は46本になり、赤ちゃんとして生まれてきます。

しかし、減数分裂に失敗すると、染色体の不分離が発生し、精子と卵子は半分になりきれなかった染色体数(23本ではない)になります。その精子と卵子が受精をしても受精卵の染色体は正常(46本)ではないため、妊娠しなかったり、流産するという原因になります。

受精卵が正常かどうかについては、見た目では判断できません。そこで受精卵(胚盤胞)の細胞を採取して、その染色体本数を調べることでその受精卵が正常かどうかを調べることができます。これが着床前診断PGTという検査です。つまり、着床前診断PGTの目的は、体外受精によって得られた受精卵(胚盤胞)を子宮に移植する前に検査することで流産したり、妊娠しない可能性が高い胚盤胞の移植を避けることができる。結果、胚移植あたりの出産率を高めることを目的とします。

着床前診断 PGTの検査方法

体外受精における採卵で採れた卵子を受精させ、5日間培養し、胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる状態まで発育したら、胚盤胞の細胞を少しだけ採取して検査機関に提出します。検査は日本産科婦人科学会から承認を得ている専門の検査会社が行います。

着床前診断 PGTの種類

PGTは、検査の目的により3種類あります。どの検査をしていただくかについては、これまでの流産や胚移植不成功の状況などにより異なるため、診察にてお伝えします。



①PGT-A
受精卵の染色体数を調べる検査。PGTをする方の多くがこのAに該当します。
②PGT-SR
ご夫婦に染色体の構造異常がある場合は、その特定の染色体を調べることができる検査。
③PGT-M
特定の単⼀遺伝⼦の異常がないかを調べ、遺伝性疾患をもつ⼦供が⽣まれる可能性を減らすことを ⽬的とした検査。この検査は当面当院では行いませんので、該当する方には実施可能な施設をご紹介します。

着床前診断 PGTの実績

PGTをしない場合、 1回の胚移植あたりの妊娠率は35%前後なので、PGTをすると妊娠率が約66%と高く、流産率は約10%と低いことがわかります。一方で、PGTをしても、約34%は妊娠せず、流産も発生することもわかります。

採卵解析移植妊娠率/ET流産率/妊娠
反復ART不成功5,7014,3871,38663.1%9.9%
反復流産2,6982,02860672.4%9.7%
PGT-SR48440612070.4%10.3%
8,8836,8212,11266.2%9.9%

着床前診断 PGTのメリット・デメリット

メリット

  • 胚移植1回あたりの、妊娠率が上がる
  • 胚移植1回あたりの、流産率が下がる
  • 胚移植1回あたりの、流産率が下がる

デメリット

  • PGTにより正常と判定された胚盤胞を移植しても、妊娠しなかったり、流産する場合がある
  • PGTには限界があり、誤診が発生する
  • PGTで正常胚が得られず、採卵を繰り返すこともある
  • PGTをしたことで受精卵にダメージが生じ、着床率の低下や流産率の上昇を生じさせる可能性がある

着床前診断 PGTの費用

PGTは検査機関によって、検査できる内容が異なるため、費用も2パターンあります。

種類費用検査内容
検査機関①
新鮮胚PGT-A/SR
77,000円/1個・染色体の異数性がわかる
検査機関②
新鮮胚PGT-A/SR
99,000円/1個・染色体の異数性がわかる
・一塩基多型(SNP)解析による倍数性の解析がある
・一部の細胞に染色体異常が見られた場合に、移植の優先順位の指標となるスコアが算出できる

レーザーアシステッドハッチングや、生検の費用も含まれます。
検査機関を①にするか②にするかについては、採卵後に培養士と相談の上でお決めいただきます。

着床前診断 PGTをした方がいい人

  • 胎嚢確認後の流産を2回以上繰り返している場合や、流産を可能な限り避けたい場合。流産の精神的・身体的負担を考えると、PGTのメリット>デメリットと考えます。PGTは流産を避けるためには有効な方法です。
  • 胚移植不成功の回数が多い場合。1回の採卵で4~5個以上の胚盤胞を得られている場合は、PGTで正常胚を得られれば、妊娠までの時間を短縮できる可能性があります。

着床前診断 PGTをしない方がいい人

  • 胚移植不成功回数は2回以上あるが、1回の採卵で得られる胚盤胞数が3個以下の場合は、胚盤胞が貴重な場合、PGTのメリット<デメリットと考えます。PGTをせずに、胚移植をして結果を得る方が、総合的な出産率は向上すると思われます。
  • 胚盤胞の外側の細胞(栄養外胚葉)のグレードが低い場合  
  • 年齢が高い場合は、PGTをすることで、本来であれば妊娠・出産できる胚盤胞を排除してしまう可能性があることを慎重に検討してください。また、年齢的に生検のダメージもうけやすいです。妊娠・出産を目標にする時、PGTではなく、2個胚移植で、移植のペースを上げることで、次の採卵時期を早めることが、総合的な出産率の向上に繋がると考えます。
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