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不妊治療 | 年齢にとらわれず成功率を上げるには

不妊症の検査・治療

女性医師と女性の画像

【不妊治療】年齢を重ねると妊娠が難しくなる理由

妊娠するための力のことを「妊孕性にんようせい」といいますが、この妊孕性は年齢とともに低下します。この理由を3つにわけてご紹介します。

卵子の質の低下

不妊と年齢の関係性を表すとき「卵子の質」という言葉をよく聞くと思います。卵子の質とはどういうことなのか詳しく説明したいと思います。多くの細胞は「核(DNAの集合体が染色体、染色体の集合体が核)」と「細胞質」からできています。

細胞質と核の画像

そして全ての細胞は、時と共に老化すると、細胞質のミトコンドリアが減少しエネルギー活動を終えて細胞は消失していきます。しかし、卵子以外の細胞は細胞分裂によって新しい細胞に入れ替わるので総合的に組織に問題は発生しません。この点が卵子とそれ以外の細胞の大きな違いです。女性は一生分の卵子を持って生まれており、生まれてから卵子が増えることはありません。そして体の中で最も古い細胞である卵子は、排卵や採卵をした後、精子と受精します。この受精の時に質が低下した卵子では問題が発生します。

卵子に精子が侵入すると卵子の第二減数分裂が再開されます。若い卵子の場合、減数分裂は正常に行われる確率が高く、染色体本数が正常な受精卵が発生しやすくなります。

34歳以下の卵子の画像

老化した卵子の場合、その減数分裂の時に染色体分離がうまくいかず染色体本数が異常な受精卵が発生します。ヒトの染色体本数は46本ですが、染色体本数が多かったり少なかったりすると、受精をしなかったり、受精をしても途中で発生が停止して胚盤胞まで育たなかったり、発生が進み妊娠まで至ったとしても、その先で流産をするか、あるいはダウン症などで知られる先天性の染色体異常を有した児の誕生に繋がります。

38歳以上の卵子の画像

染色体異常が発生する確立は35歳で50%を超えます。そのため、産婦人科医は35歳までの妊娠を推奨しています。その後、38歳で80%、40歳で96%という高確率で発生すると考えられています。

胚盤胞まで育ったグレードの良い胚であっても、見た目ではわからない染色体異常を有している場合があります。胚移植不成功の原因でもっとも多いのが染色体異常です。

2018年の日本産科婦人科学会の発表によると、胚移植当たりの生産率(出産率)は30歳で34%、35歳で30%、40歳で17%、45歳で2.8%と年齢の上昇とともに生産率も下がっていることがわかります。これは年齢の上昇に伴い染色体異常を有する卵子が増加するためです。

一方、米国疾病予防管理センターのデータによると若年女性からの提供卵子を用いた場合、移植時する女性年齢の上昇とは無関係に高い生産率が得られることが報告されています。つまり、加齢による子宮への影響は少なく、妊娠率の低下の主な原因は「卵子の質の低下」ということを示唆しています。

卵子の質の低下は、時間の経過とともに誰にでも生じる問題です。卵子の質の低下を止めることや治すことはできないということをご夫婦で共有して妊活を進めていただきたいと思います。

卵の数の減少

女性の持つ卵の数はいつが一番多いと思いますか?
実は妊娠5ヶ月、つまりお母さんのお腹の中にいるときに卵母細胞(卵子の元になる細胞)の数はピークを迎えます。このとき約600万~700万個まで増えた卵母細胞は閉経に至るまで継続して減少し、増加することはありません。
生まれてくるころには、約200万個となり排卵が起こり始める思春期頃には30万個まで減少します。その後、37歳で25,000個、51歳で1,000個となり閉経に至ります。
そのうち生涯にわたり排卵する卵子は400~500個と全体の1%もありません。卵母細胞が減数分裂をすることに卵子となりますが、排卵の準備が開始するまでは減数分裂の途中の段階で停止している状態でいます。停止状態の卵母細胞1,000個~2,000個に対して排卵準備の知らせが届きますが、排卵できるのはそのうちの1つの卵のみです。その他の細胞は排卵の準備が整わず後に消滅します。年齢を重ねるごとに、排卵までの停止期間は長くなり、この長い停止期間が染色体異状の要因の一つとされています。その結果として、受精しにくくなったり妊娠したとしても流産が起こりやすくなります。

女性の一生と卵子の数の変化
https://saas2.startialab.com/acti_books/1045178467/18329/HTML5/pc.html#/page/68

精子の老化

精子は新たに作られることのない卵子とは違い、約80日周期で新しい精子が作られます。なので、女性に比べると加齢による精子のダメージは少ないです。しかし、それはゼロではなく、最近の研究では男性も年齢を重ねるにつれ精子の数や運動率、もしくは質といわれるDNA損傷率に影響がでてくるケースがあると報告されています。当院の非常勤医師である岡田先生によれば男性も35歳を過ぎると精子の力が衰えていく人たちが存在するとのこと。
しかし、精子の良いいところは毎日作られている細胞なので治療により改善できる場合がある点です。まずは一般的な精子検査に加えてDNA損傷率を調べてみましょう。そして問題がある場合は男性不妊外来で相談しましょう。

【不妊治療】妊娠のタイムリミット

「私が開業した1990年代前半では、女性の年齢が40歳以上は治療しないという暗黙のルールがあり、患者さんも自身で判断し自ら治療を終わらせるという時代でした。

このような流れが変わってきたのは、顕微授精の出現でしょうか。ART技術の進歩が、あきらめざるを得なかった患者さんに、妊娠の万能薬として受け入れられ、さらにここ数年の技術の進歩が、患者さん自身にまだ行けるかもしれないという、諦める決断の付かない状況を作り出していると思います。」

これは、はらメディカルクリニック創業者 故原利夫の言葉です。

ここにあるように、体外受精の技術の進歩により個人差はありますが高齢の患者様でも妊娠できる事例もでております。しかし、そうはいっても女性の妊娠に適した時期というのは、卵子の質が正常で、卵子の量が充分あり、ホルモンバランスがよく、卵巣機能が正常な期間、つまり25歳~35歳前後であることに変わりはありません。治療をもってしても妊娠適齢期を延ばすことはできないのです。
そのため自分の年齢、将来の希望するお子様の数を鑑みて正しい知識のもとご夫婦の治療計画及び家族計画を設計をしていくことが必要なのです。

昔と今の年齢別妊娠率:10年間で体外受精の技術が進化し、1回の移植に対する妊娠率は上がっていますが、35歳を境に妊娠率の下がり幅が大きくなっていることは昔も今も同じです。

年齢別妊娠率 2007年と2018年の比較

妊活を開始するタイミング

妊活をするかどうか、どの程度するのか、は夫婦によって考え方が様々です。
ただ妊娠適齢期は全ての人に共通するものなので、早いうちから夫婦で相談し適切な時期に検査や治療をはじめられるようにしておくことが大切です。
参考として将来希望する子どもの数とその出産率からみて、妊活を開始すべき年齢についてまとめた論文データを紹介します。必ず1人は子どもがほしいと考える夫婦の場合、自然妊娠であれば32歳までに、体外受精であれば36歳までに治療を開始すれば90%の方は希望した結果を得られているというものです。子どもの数が増えるほど、もっと早い時期での妊活開始が必要になります。

まだ、子どものことは考えていなくても、早い段階で検査だけでも受けておいて、必要な時に適切な妊活をはじめられるように準備をしておくと良いかもしれません。

妊活から"自分の人生"考える

【不妊治療】年齢にとららわれず少しでも成功率をあげるには 不妊治療編

妊娠率が高い治療に早めに進む

不妊治療は原因を治療する医療ではなく、妊娠するための方法を選択する医療です。どの医療を選択するのかによって期待できる妊娠率が異なります。女性の年齢や精子の状態に応じて、「治療をせず自己流の妊活をした場合」「タイミング療法をした場合」「人工授精をした場合」「体外受精をした場合」にそれぞれ妊娠率はどのくらいなのかを理解しましょう。そして、妊娠の結果が出ない場合は、早めに確立が高い治療に進みましょう。

受精卵を凍結保存しておく

なるべく自然な方法で授かりたいけれども年齢が気になるという場合や、今はまだ出産を希望していない場合は、受精卵を凍結保存しておきましょう。マイナス196℃で凍結された受精卵は、それをお迎えできる日まで品質を落とすことなく静かに眠って待っていてくれます。女性の年齢上昇に伴って発生する卵子の質の低下、量の低下を医療で止めることや治療で治すことはできません。しかし、今が一番若い卵子を精子と受精させ最も妊娠に近い胚盤胞という状態で温存しておくことができます。

体外受精をする時は1採卵当たりの妊娠率を意識しましょう

タイミング療法や人工授精に比べて妊娠率の高い体外受精ですが、その方法はさまざまです。体外受精をはじめる時は1回の採卵で複数の胚盤胞を獲得し、最大の効果が出せる方法を意識しましょう。妊娠率は採取できる卵子の数に比例します。また、何度も採卵を行うよりも体に優しく、費用も抑えられる方法です。

【不妊治療】年齢にとらわれず少しでも成功率をあげるには 生活習慣編

生活習慣をを見直すことだけで妊娠できる可能性は正直なところ高くはありません。
不妊治療をメインとし、さらに生活習慣を見直すことで妊娠の可能性を高める方法についてご紹介します。これら全てを見直さなければならないということはなく、できそうなことから1つずつ取り入れてみてください。

身体を冷やさない

体温を上げることで血流が改善し必要なホルモンがめぐりやすくなります。さらに受精・胚分割・着床に作用するミトコンドリアの働きが正常化されます。38-40 度の湯船につかったり、温かい飲み物を飲んだりして身体を冷やさないようにしましょう。

肥満を予防し体重をコントロールする

太りすぎも痩せすぎも、不妊のリスクがあるとされています。
肥満気味の方は排卵が起こらなくなる「多嚢胞性卵巣」を起こしやすくなります。一方痩せすぎの方は栄養不足・エネルギー不足に陥ると、脳は命に関わる臓器のほうを優先して働かせようとするので、卵巣の機能を停止させ、その結果排卵が止まってしまうことがあります。
BMIを参考に適切な体重管理をしましょう。

足りない成分をサプリメントや医薬品で補う

体内で生成されないものは食事で補うしかないのですが、それでも必要な量を取ることは難しいですよね。その場合はサプリメントで補って状態のいい身体を作りましょう。

レスベラトロール 卵胞の発育を改善し細胞膜を安定させることから若返りのサプリメントとして有名です。動物実験で卵子の若返りは証明されています。
ビタミンD 卵の成熟を促進する作用があります。
ヒシエキス 糖化による老化を抑える作用(抗糖化)があり、これがAGE(終末糖化産物)を低下させ卵子の質を改善します。
DHA 正常な形態の精子を作るために必要です。
メラトニン 酸化ストレスを軽減させる抗酸化作用があるといわれています。卵を保護し質を改善させると言われています。
亜鉛 亜鉛が欠乏すると精巣にも影響を及ぼすことがわかってお、摂取することでり精子所見の改善が見込めます。

規則正しい睡眠

睡眠不足はストレス系のホルモンばかりでなく、妊娠に関わるエストロゲンやプロゲステロンの分泌バランスを狂わせます。5時間以下の睡眠では血中コルチゾールが上昇し体内で炎症が起きて4~5年に相当する老化を引き起こします。反対に8時間を超える睡眠も細胞変化を起こすため7 時間睡眠が適切と言えます。
妊娠しやすい時期は十年ほど、そして1年に妊娠できるタイミングは12回しかありません。

もっと早くああしていれば・・となる前にご夫婦での人生プランの相談や、検査だけでも大丈夫です、まずはできることからはじめてみてはいかがでしょうか。

はらメディカルクリニックについて

はらメディカルクリニックでは、採卵、受精、培養、胚移植における医療を提供することにより、最短妊娠をサポートします。

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