D配信#36:報道と当院の公式見解、ドナーへの影響、ドナーの気持ちの理解、AID同意書の改版、夫がAB型の夫婦へ
【1】報道と当院の公式見解
【2】ドナーへの影響
【3】ドナーの気持ちの理解
【4】AID同意書の改版
【5】夫がAB型の夫婦へ
【1】報道と当院の公式見解
今年5月の重大なガイドライン違反について、各新聞で報道されました。突然の報道に驚かれた方も多いことと思います。違反の詳細や発表の経緯についての「当院の公式見解」は、以下のリンクでご確認ください。
▼当院の公式見解
https://www.haramedical.or.jp/news/mail-magazine/kenkai-2.html
【2】ドナーへの影響
報道後、既に精子の提供を済ませているドナーからの問合せがとても増えました。当院は、ドナーからのすべての問い合わせに真摯に対応しています。
【3】ドナーの気持ちの理解
当院のドナーは、商業的な精子バンクのドナーとは異なる動機付けで提供しています。具体的には、商業的精子バンクのドナーは「ドナーが条件で夫婦から選ばれること」や「事実婚、同性カップル、選択的シングルマザーの治療にも使用されること」に同意しています。しかし、当院のドナーは、「法律的に婚姻した夫婦の治療にのみ使用されること」と、「告知をして育てることの約束」を大前提としています。
この大前提が崩れると、ドナーの善意の行為は、ドナーが意図しない結果を招きます。ドナー精子はモノではなく、提供の背景にはそれぞれのドナーの考えや価値観があります。ドナーは、「自分の精子をどう使ってもいいですよ」と言っていません。もちろん、どんな人に精子を使ってもらっても構わないドナーもいるでしょう。しかし、そうでないドナーもいます。ガイドライン違反の影響で、ドナーは、自身の精子提供の意義や意向に疑問や衝撃を感じているようです。重大なガイドライン違反においても、ドナーの立場上のリスクは当院が法的に保全できました。しかし、ドナーが精子を提供した意義という最も大切な部分は、もはやどうすることもできませんでした。
精子提供は多様化しており、色々な考えがあって良いと思います。ただし、それは、巻き込むすべての人(夫婦・ドナー・医療機関)が同意していることが大前提です。子どもの同意を得ることはできませんが、そこにいる夫婦・ドナー・医療機関の同意は最低限得るべきです。生殖補助医療は、人為的に新しい命を生み出します。関わる人すべての倫理観が問われます。
【4】AID同意書の改版
AIDの同意書は、「実施当日の記入のみ有効」とし、実施日以前の記入は無効となります。実施日の当日の朝に記入してください。
▼非配偶者間人工授精(AID)に関する同意書
https://www.haramedical.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/02/AIDagreement.pdf
【5】AB型の夫婦へ
AB型のドナー精子の残数が少なくなりましたので、近いうちに2022年2月以降登録ドナー精子に切り替わる見込みです。切り替えの連絡は直前になりますので、当院からのメールを確認お願いします。2022年2月以降登録ドナー精子を使用する場合、追加の同意書が必要になります。2022年2月以降登録ドナーの使用からは、精子提供者の周辺情報(身長、体重、体の特徴、血液型、人種的背景、趣味、職業、精子を提供する理由、病歴)の開示と、生まれた子どもが18歳以上になると、自身の結婚予定者(お付き合いしている人)が近親婚でないことの確認を当院に問い合わせることができます。
(2023年10月29日)