特定生殖補助医療に関する法律案のたたき台について
2023年11月7日、第25回「生殖補助医療の在り方を考える議員連盟(以下、議員連盟)」総会において、特定生殖補助医療に関する法律案の2回目となるたたき台が示されました。特定生殖補助医療とは、第三者の精子・卵子提供による生殖補助医療のことです。
2022年3月に示された法律案の1回目たたき台には、多くの反対意見が寄せられました。反対意見を表明するために、日本弁護士連合会が会見を開き、日本産科婦人科学会がシンポジウムを開催し、当事者がロビー活動を行い、当院は国会議員22名に対して請願活動をしました。それぞれに、子どもの福祉と治療の権利の実現に向けて尽力してきました。
しかし、この訴えは、国会議員の考えを変えることはできませんでした。11月7日に示された法律案の2回目たたき台でも、子どもの出自を知る権利は保証されていません。さらに、治療を受けることができる対象者は、依然として法律婚の夫婦のみに限定されています。当事者にとっては、他にも厳しい内容となっております。
これから、特定生殖補助医療に関する法律案の2回目たたき台の中身について、当院の見解を交えながら、説明していきたいと思います。
1.日本産科婦人科学会の要望は採択されず
日本産科婦人科学会は、法律案に対して積極的な提言を行ってきました。学会はシンポジウムを開催し、パブリックコメントを募集するなどして、当事者や関係者の幅広い意見を収集し、それらを集約して議員連盟や厚生労働省に提出しました。提出された要望の中でも、「子どもの出自を知る権利は基本的な人間の権利である」という点を強く求めましたが、学会が最も重視したこの要望ですら採択されませんでした。
2.当院の要望も採択されず
当院は、「子どもの出自を知る権利の保障」を求めて国会議員への請願や、啓発活動をしてきました。この権利を保証するためには、全ドナーの非匿名化が必要不可欠です。当院では、2022年2月以来、必要とされる数の非匿名ドナーを確保することに成功しています。この成果については、議員連盟の国会議員にも報告済みです。しかしながら、議員連盟では、全ドナーの非匿名化に関する議論は全くといってよいほど行われていません。多くの国会議員が、治療現場の実情を把握せずに、非匿名ドナーのみを集めることは極めて困難であるとの認識を持っていました。この度の法案審議においてこの問題が取り上げられなかったことは、日本がまだ「子どもの出自を知る権利の保障」についてに真摯に取り組む準備ができていないことを物語っていると思います。
3. 議員連盟が考える出自を知る権利の担保とは
生殖補助医療の在り方を考える議員連盟が作成した本法律案のたたき台は、当事者や日本産科婦人科学会が望んだ内容とは大きく異なる結果となりました。その最大の理由は「出自を知る権利』に対する認識の違いです。
出自を知る権利には2つあります。
- 権利①子どもが自分はどのようにして生まれたのかを知る権利
- 権利②子どもが、自分の遺伝的ルーツを知る権利(ドナーのことを知る権利)
議員連盟は権利①について、「出自を知る権利で最も重要なのはテリング(親から子への真実の告知)です」と第25回総会の中で述べています。法律案のたたき台1回目と2回目を比較した際に最も注目すべき変化点がこの部分です。2回目の法律案のたたき台には、子どもへの適切なテリングが行われるよう支援するための新たな文書が盛り込まれました。(第2の3、第8(2)(3)の3条文が追加)国がテリングの必要性を理解し、そのためのサポート体制を法的に定めることは、大いに評価されるべき進歩だと思います。
しかし、権利②子どもが、自分の遺伝的ルーツを知る権利(ドナーのことを知る権利)については、本法律案のタタキ台の内容では全く考慮されていないと言えます。議員連盟は11月7日の第25回総会にて、「出自を知る権利」の担保のため、子どもが18歳に達した時点で「ドナーの身長、血液型、年齢」を知れることを保障するとしています。
「ドナーの身長、血液型、年齢」だけでは、出自を知る権利とはかけ離れた、あまりに少なすぎる情報と言えます。さらに、子どもが自分の出自を知り向き合っていくためには、18歳の情報開示では遅すぎます。当院は国に先駆けて子どもの出自を知る権利を保障する医療を提供してきました。妊娠後の夫婦には、ドナーの人となりがわかる情報として、「身長、体重、体の特徴、血液型、親の人種的背景、趣味、職業、精子を提供する理由、病歴」を開示しています。これは、子どものアイデンティティ形成に重要な影響を与える情報であり、発達段階に応じて親から子へと適切に伝えられるべきものだと考えるからです。このような情報開示は、ドナーの匿名性を維持しつつも、子どもとその家族にとっての意義深い情報を提供するものです。議員連盟は当院の情報開示について認知しているにも関わらず、これらの点を考慮せずにこの法案を進めたことは、非常に残念です
4.精子ドナーの条件
法律案におけるドナーの条件は、日本国内に住所をもち、マイナンバーカードを持つ者は、国籍を問わずドナーになることができます。ただし、外国人の場合には在留期間が無期限の者に限定されます。ドナーの年齢は上限が設定されますが、具体的な年齢については法案成立後の施行準備の中で検討されます。提供精子・卵子の保存期間は設けません。ドナーの死亡が確認された時は提供された精子・卵子は破棄されます。ドナーは自分が死亡後に子どもがドナーの情報開示を求めてきた場合に氏名を開示するかどうかについて事前に決めることができます。
5.大問題!ドナー情報は一切わからなくなる
本法案における一番の問題点は、患者も治療を実施する医療機関も、ドナー情報が一切わからなくなるという点です。
これまでの精子提供の人工授精(以下、AID)は、下記イラストの3つの施設の役割を1つの医療機関の中で担ってきました。ドナー精子がどの患者夫婦に使用されたかを把握できたことで、当院は子どもの福祉を最優先したサービスを提供することができました。
法制化後は、「実施医療機関」には、「あっせん機関」を通じて、「ドナーの出身国、血液型を含めた一切の情報がないドナー精子」が納品されます。そのため、
・夫とドナーの血液型のマッチングがなくなります。
・治療をする時点も、妊娠、出産後もドナーの情報は一切分からない。子どもが18歳になった時点で「ドナーの身長・血液型・年齢」以外の情報が知りたい場合、ドナーの了承が得られた情報は知れる可能性がある。
・当院が独自に行ってきたIVF-Dの非匿名ドナー選択はできなくなります。
・当院が独自に行ってきた妊娠後の夫婦へのドナーの周辺情報の開示はできなくなります。
・ドナーは外国人も含まれ、見た目の考慮などもありません。
・引き続き、夫婦はドナーを選ぶことはできません。
6.AIDとIVF-Dはどう変わるのか[まとめ]
法制化のあと、IVF-Dが正式な治療として認められます。一方で、AIDでもIVF-Dでもドナーの条件は、国籍や血液型を含め一切わからなくなります。「それを問題としない夫婦だけ実施してください」という治療になります。(ただし、兄弟間の精子提供が認められるため、その場合のみ既知のドナーとなります。)
そして子どもが18歳になれば、ドナーの身長・血液型・年齢だけは必ず知ることができます。しかし、それ以上の情報について知りたいと思った時は、上のイラストのように、独立行政法人に連絡をし、その時点でドナーが了承した場合のみ、ドナーが開示を了承した追加情報のみを知ることができます。
本法律は、刑事罰による罰則ができるため、現在のように子どもの福祉を最優先に考えた医療であっても、各医療機関による独自ガイドラインのもと治療を行うことは出来なくなります。つまり患者さんの選択肢は①法の通り出自を知る権利の保障がされない治療を日本国内で実施する ➁海外での治療を選択する、というこの二つになると考えられます。
7. どの施設が精子・卵子を集めるのか?
現時点では、精子や卵子のドナーの募集は国立成育医療センターが想定されています。しかしドナー募集や採用に関する経験がない状態で、採用基準の策定、面談、検査の実施といったプロセスをゼロから構築し、維持していくのは膨大な課題を伴います。ドナーを集め、この治療を法制化に則った形で実施が可能となるまでには時間がかかるかもしれません。
8.法案改定の要望
IVF-Dが治療として認めらえることで、妊娠率は大幅に上がり、たくさんの子ども達が生まれてきます。子どもの出自を知る権利が今以上に守られない状態で、この医療により多くの子どもが生まれていくことに当院は大きな危機感を感じています。法律案が固まるまで時間がないことから、当院は、実現可能な最低限の法案改善を議員連盟に要望したいと思います。
- ドナーの個人を特定しない情報については、子どもが18歳になる前に知ることができるように、第7(3)の改定を要望
法案たたき台第7 (3): 独立行政法人は、特定生殖補助医療により出生したとして独立行政法人で情報が保存されている子であって成年に達したものからの情報開示の求めに応じ、精子・卵子の提供者の情報であって個人を特定しないものとして省令で定めるものを開示するものとすること。※ 省令では、身長、血液型、年齢を規定する。
①「成人に達したもの」という文言を『成人に達したもの、あるいは、未成年の場合は子の親』に改定
②子どもに開示されるドナー情報は「身長、血液型、年齢」ではなく、『身長、体重、血液型、年齢、趣味、職業、精子を提供する理由』に改定
- 日本人のドナー精子で治療ができるように、第4の改定を要望
法案たたき台第4:あっせんにおいて、提供された精子・卵子と提供を受ける者をマッチングする際、特定の属性を合わせることや提供を受ける者のなかで優先順位を付けることは行わない。
「特定の属性を合わせること(は行わない)」という文言を『国籍を除く特定の属性を合わせること』に改定
ドナーの国籍がわからないことは、夫婦や子どもに与える不安や影響はとても大きいと思います。不安が生涯続き、自分が何人なのかを生涯問い続けることは苦痛です。
日本人という言葉の定義は色々ありますが、当院は、本人が日本国籍を有し、両親が2人とも日本国籍を有しており、両親の人種的背景は東アジア系という定義です。患者の中には外国人もいることから、外国人ドナーも必要になるでしょうから、国籍は選べるよう修正を要望します。
9.現在行っているIVF-Dや海外精子バンクについて
法制化前の今日現在、厚生労働省と日本産科婦人科学会が認めている精子提供の生殖補助医療は、AIDだけです。現時点では認められていない独自ガイドラインによる当院のIVF-D、また海外の精子バンクを利用した治療は、新たな法律の施行より新規の実施は不可能となります。
法律が制定された後、法制化前に凍結した胚を廃棄することが求められることは考えにくく、凍結胚は胚移植までおこなえると考えられますが、不確かではあります。もしこれが不可能となる場合は、当院はこれに対して強く抗議します。また現在海外精子バンクを使用した凍結胚については、実施医療機関の判断が大きく影響すると思われます。
10.おわりに
70年の歴史のあるAID治療ですが、時代と共に多くの問題が浮かび上がり、難しい医療であることは事実です。しかし私は当事者の思いを汲みながら、長年軽視されてきた「子どもの福祉」を最優先にした治療に整えていくことで、この治療は幸せな家族を作るための素晴らしいものとなると信じて取り組んで参りました。それだけに、今回の法律案は子どもの福祉を最優先に考えているとは言えず、この法律に則って治療を実施していくことを想像すると苦しくなります。法案の成立までに、私たちがまだ出来ることを必死に模索し最後まであがきます。どうか、この治療のより良い未来のために当院の考えに賛同していただける方は【署名】をお願いしたいです。
令和5年11月12日
はらメディカルクリニック
副院長 鴨下桂子
11.署名のご協力のお願い
法案骨子は11月20日頃までに決定されてしまいます。時間がないことから、子ども権利においてどうしても譲れない改定要望を3点に絞り、署名活動を行っています。ご賛同いただける方は、以下のリンクよりお進みください。署名は一般社団法人AID当事者支援会と協力して行っています。
特定生殖補助医療法案の改定を求める
署名リンクはこちら
*11月14日13時現在1138件の署名をいただきました。ありがとうございます。
12.資料:特定生殖補助医療法案たたき台
原文ママは記載できないため、わかりやすい言葉に変換しています。赤字はたたき台1回目から2回目の変更点です。
第1 規律の対象
精子提供、卵子提供の生殖補助医療を「特定生殖補助医療(仮)」として規律の対象とする。
*代理懐胎も特定生殖補助医療に含まれ規律の対象になるが、本法案に代理懐胎は含まれない。
第2 特定生殖補助医療の実施
1.特定生殖補助医療の制限
医師は、特定生殖補助医療のうち、医学的に夫の精子又は妻の卵子により妻が子を懐胎することができない夫婦について次の①~③までのいずれかに限り行うことができる。
- 夫以外の第三者の提供精子を妻に行う人工授精(AID)
- 夫以外の第三者の提供精子を妻に行う体外受精(IVF-D)
- 夫の精子と妻以外の第三者の提供卵子による体外受精(卵子提供)
2.特定生殖補助医療を実施する医療機関●の認定
1を行う医療機関は、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。(認定要件は、適切な設備、人員、体制が準備されていることなどを規定する)
3.特定生殖補助医療に関する説明・同意書
特定生殖補助医療を実施する医療機関●は、特定生殖補助医療を行う度に、夫婦に対して、適切な説明を行い、書面による同意を得なければいけない。*説明の内容には、第8の(1)の配慮に関する事項を含めた全般に関わることを想定
4.あっせん機関を通じた認定供給医療機関からの精子・卵子の供給
認定実施医療機関●は特定生殖補助医療を行うにあたって、これに用いる精子・卵子は、許可をうけたあっせん機関■によるあっせんを通じて、認定供給医療機関★から供給を受けなければならない。ただし、兄弟姉妹等間の提供の場合はあっせん機関■の利用の例外とする。
*ドナーについて
・国内に住所があり、マイナンバーカードを保有する者は国籍を問わず精子・卵子を提供できる。
・ただし、出自を知る権利を確保する観点から、在留資格をもって滞在している者については、在留期間が無期限の者に限定する方向。
・ドナーは年齢上限を設定。具体的な目安については法案成立後の施行準備の中で検討。
・提供された精子や卵子の保存期間は設けない。
・ドナーの死亡が確認された時は、提供された精子・卵子は破棄する。
5.独立行政法人(国立成育医療センターを想定)への同意書と夫婦・生まれた子の情報等の提出
認定実施医療機関●は、妻が妊娠したことを確認したときは、その夫婦の治療同意書と夫婦の氏名、住所、生年月日、マイナンバーなどの情報及びその特定生殖補助医療に用いられた第三者の精子・卵子を識別するために必要な情報を、独立行政法人に対して提出しなければならない。
認定実施医療機関●は、妻が妊娠した子の出生を確認したときは、その生まれた子の氏名、住所、生年月日、マイナンバーなどの情報を独立行政法人に対して提出しなければならない。
第3 特定生殖補助医療に用いられる精子・卵子の供給
1.認定実施医療機関●に、精子・卵子の供給する供給業務を行う供給医療機関★は、内閣総理大臣の認定を受けなければいけない。(認定要件は、適切な設備、人員、体制が準備されていることなどを規定する)
2.精子・卵子の提供に関する説明・同意
認定供給医療機関★の医師は、精子・卵子を提供する者(ドナー)に対して、提供や使用について適切な説明を行い、書面による同意を得なければならない。
・ドナーに第7の(3)の同意をとる(第7の3とは、「18歳以上になった子どもからドナーの情報開示がある場合、ドナーの個人を特定しない情報(身長・血液型・年齢)を子どもに開示すること」)
・ドナーは予め自身が死亡等の後に子どもに対して氏名を開示するかどうかを自由に決めることができる
・死亡等とは、死亡の他、海外転出などを想定
3.独立行政法人への同意書等とドナーの情報の提出
認定供給医療機関★は、精子・卵子のドナーと取り交わした同意書、死亡等の場合の氏名開示に関する確認書、ドナーの氏名、住所、生年月日、マイナンバーなどの情報、ドナーの個人を特定しない情報(身長・血液型・年齢)を独立行政法人に対して提出しなければならない。*同一のドナーから提供された精子・卵子により懐胎する妻が10人を超えないように措置する。
第4 特定生殖補助医療に用いられる精子・卵子のあっせん
あっせん機関■は、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。許可の要件は、例えば、①営利を目的とするおそれがないこと、②あっせんを公平かつ適切に行わないおそれがあること、など
*あっせんにおいて、提供された精子・卵子と提供を受けるものをマッチングする際、特定の属性を合わせることや提供を受ける者のなかで優先順位を付けることは行わない。
第5 特定生殖補助医療基準
・内閣総理大臣は、認定実施医療機関●と認定供給医療機関★と認定あっせん機関■の基準を定めるものとする
・認定実施医療機関●と認定供給医療機関★と認定あっせん機関■は上記(1)の基準に従わなければいけない
第6 監督
・認定実施医療機関●と認定供給医療機関★と認定あっせん機関■への立ち入り検査、内閣総理大臣による指示・命令・認定・許可の取り消しなどについて規定すること。認定をうけていない医療機関等も立ち入り検査の対象とする。
・認められていない医療を行った場合、内閣総理大臣の中止命令について規定する。
第7 独立行政法人における同意書等と夫婦・生まれた子・ドナーの情報の保存など
(1)独立行政法人は認定実施医療機関●から提出された夫婦と子の情報と、認定供給医療機関★から提出されたドナーの情報の情報を100年間保存するものとする
(2)独立行政法人は、「自分は提供精子・卵子から生まれたのではないか?」と考える18歳以上の者から確認を求められた時は回答する
(3)独立行政法人は、精子・卵子提供による出生した成人した子(情報が保存されている場合)からの情報開示の求めに応じ、精子・卵子ドナーの情報であって個人を特定しないものとして定めるもの(身長、血液型、年齢)を開示するものとする。
(4)独立行政法人は、精子・卵子ドナーが死亡等している時は、事前にドナーから同意を得ている場合に限り、ドナーの氏名を開示する。
(5)独立行政法人は、提供精子・卵子の医療により出生し、18歳以上になった者から、精子・卵子のドナーの情報提供の求めに応じ、独立行政法人はドナーに対してその事を伝える。その上で、ドナーから独立行政法人に対して、子に提供する情報の回答があった時は、独立行政法人はその内容を子に伝えるものとする。
*独立行政法人が担う業務(情報の保存、情報の精査、医療機関への応答業務、子に対する情報開示業務、精子・卵子の提供者の死亡等の確認業務等)については現実的にどのような対応であれば可能なのかは今後検討
第8 特定生殖補助医療により出生した子に対する配慮等
(1)特定生殖補助医療の提供を受けた夫婦は、これにより出生した子がその真実を知ることができるよう、子の年齢及び発達の程度に応じた適切な配慮をするよう努めなければいけない。
(2)国は、(1)の適切な配慮に資するよう、特定生殖補助医療の提供を受けた夫婦に対する情報の提供とその他の支援を行うために必要な体制の整備を図らなければならないこと。
(3)国は、(1)の配慮に関連して、自らが特定生殖補助医療により出生した子であることを知った者及び自らが特定生殖補助医療により出生した子であると思う者に対し、(1)の配慮の状況及びこれらの者の年齢・発達の程度、置かれている環境等に応じた相談支援が提供されるよう、必要な体制の整備を図らなければならない。
*テリングに関する(2)の夫婦に対する支援や(3)の子に対する相談支援は、医療従事者や経験者により行われることを想定。
第9 精子・卵子の提供及びそのあっせんにかかる利益の授受の禁止
・特定生殖補助医療に用いるための精子・卵子の提供の対価として、財産上の利益の授受又はその要求・約束をしてはならないこと。
・特定生殖補助医療に用いるための精子・卵子の提供のあっせんの対価として財産上の利益の授受又はその要求・約束をしてはならないこと。
・(1)(2)の対価には、精子・卵子の提供及びそのあっせんに関して通常必要であると認められる費用は含まれないものとする。
第10 独立行政法人独立行政法人への権限及び事務の委任
第2の5、第3の3及び第7の内閣総理大臣の権限及び事務は、独立行政法人(成育医療センターを想定)に行わせるものとすること。
第11 罰則
・第4の許可を受けずに精子・卵子のあっせん業務を行った者
・第6の内閣総理大臣の命令に違反した者
・第9の精子・卵子・胚の提供及びそのあっせんに係る利益の授受の禁止に違反した者
第12 施行期間
公布の日から起算して〇年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること
第13 検討
(1)特定生殖補助医療の提供をうけることができる者の範囲については、特定生殖補助医療により子を生み育てることを希望する者が置かれている状況に鑑み、この法律の公布後5年を目途として、特定生殖補助医療により生まれる子の福祉を配慮しつつ検討が加えられ、その結果に基づいてひつような措置が講ぜられるものとすること。
(2)政府は、特定生殖補助医療により生まれた子が自らの出自に関する情報を知ることに資する制度が設けられたことを踏まえ、当該子以外の者であって自らの出自に関する情報を知ることが困難な状況にあるものがそれを知ることに資する制度を設けることについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする
*上記のほか、法律の施行後3年を目途として、この法律の施行状況等を勘案して法律全体について検討を加える旨の規定を設ける。
*内閣総理大臣の権限及び所管・共管については、新たに追加される権限及び事務(*)の性質や適切に執行するために必要となる体制等も踏まえる必要があり、今後の条文化作業の中で制度の詳細を議論することと併せて検討。(認定供給医療機関及び認定実施医療機関に対する認定・立入検査・指示・命令や認定を受けていいない医療機関等に対する立入検査、精子・卵子の提供のあっせん機関の許可など)
・内容に誤りなどございましたらこちらまでご連絡いただけますと幸いです。随時修正いたします。
・本記事は、11月8日初稿、11月12日改定です。