2021年妊娠実績報告書、東京都の先進医療助成金は最大90万円まで No.151
【1】2021年妊娠実績報告書
【2】東京都の先進医療助成金は最大90万円まで
【1】2021年妊娠実績報告書
2021年の実績がまとまりましたので取り急ぎPDFを共有いたします。体外受精は1枚目、タイミングや人工授精は2枚目です。配布用の紙資料は用意ができましたらチェックイン機横にご用意します。
https://www.haramedical.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/03/result2021.pdf
2021年は胚盤胞発生率に優位な向上が見られました。理由は、採卵前のLHサージ誘起(トリガー)においてデユアルの割合が増加し成熟率が高まったこと、ICSIにおけるPIEZO率が増加したこと、タイムラプスの利用者が増加したことが考えられます。
【2】東京都の先進医療助成金は最大90万円まで
■東京都にお住まいの方へ
保険で体外受精をしている方は、先進医療において、1回15万円まで×最大6回の助成をうけることができます。
・1回の数え方は?
・胚移植ができない場合は?
・いつから申請できるの?
など、詳細は次の動画をご覧ください。
https://vimeo.com/768823822
■市区町村での助成もあります
東京都の方はダブル助成になる場合や、東京都以外でも先進医療の助成金制度がある地域もあります。各自でご確認ください。
■民間保険の先進医療特約は別
行政の先進医療助成金と、民間保険の先進医療特約は別です。両方をもらえる場合がありますので、民間保険についてはご加入の保険会社にお問合せください。
■先進医療の取り入れ方
体外受精の際は、要望書などで先進医療のご希望を確認しています。現在先進医療に指定されている治療や検査は侵襲性がないものや低いものばかりです。いつ、どの先進医療を取り入れるのかについてはご夫婦の希望が最も優先されます。助成金で費用負担が軽減されますので今一度先進医療を見直す機会です。
<先進医療の説明>
[タイムラプス]受精卵の培養環境を最適化することが目的です。従来だと受精卵を培養器から出して観察することで環境の変化が生じ受精卵にストレスが発生してしまいましたが、タイムラプス培養では受精卵を培養器の外に出す必要がなく一定の環境下で発育を見守ることができます。当院ではタイムラプス利用により胚盤胞の発生率が11%高まりました。
[子宮内膜スクラッチ]子宮の内膜を少しひっかく処置をします。目的はその傷が修正する過程で分泌するサイトカインなどの物質です。胚移植後に受精卵が子宮内膜に着床する過程では子宮内膜から分泌するサイトカインが必要ですが、スクラッチによりサイトカイン等の物質が分泌していることでより着床に有利になると考えられています。子宮内膜スクラッチを実施した周期の妊娠率は非実施周期に比べて6%上昇しました。
[SEET法]体外受精においては、胚の挿入と子宮内膜の着床準備に時差が生じやすいことから、当院では数年前から胚移植周期において原則全例実施しています。
[二段階胚移植]1回の胚移植周期において、分割途中の初期胚を移植し、その数日後に胚盤胞を移植する方法です。胚盤胞2個胚移植より妊娠率は低下します。
[ERA]受精卵が子宮内膜に着床できる時期「着床受容期」を調べるための検査です。着床の窓の検査とも呼ばれます。胚移植と同じホルモン補充周期をつくり、本来であれば胚移植をするタイミングで子宮内膜を採取します。その内膜を次世代シークエンサーで解析し着床時に出現する特異な遺伝子を調べることで着床の時期を特定します。検査に1周期かかり費用も13万円と高額であることから複数回胚移植をしても妊娠しない場合に選択することが多い検査ですが、胚盤胞が貴重な場合は早めに検査する方もいらっしゃいます。当院におけるERAの陽性率(ずれていた率)は26.5%で、検査後の妊娠継続率は29.4%上昇しました。
[EMMA・ALICE]超音波では確認できない子宮内膜の炎症や、子宮内の細菌叢を調べる検査です。子宮内膜を採取する際に痛みを伴うことから、採卵日に麻酔下でこの検査を希望する方が多いです。検査で炎症が見つかった場合や細菌叢が乱れている場合には、胚移植前に治療を行います。当院におけるALICEの陽性率は23.4%で治療後の妊娠継続率は11.8%上昇しました。EMMAの陽性率は66%です。
[PICSI]ヒアルロン酸によって成熟した精子を選別し、顕微授精する方法です。しかしながら、PICSIは現在まだ当院での実施を開始していません。現在準備をしておりますのでもう少しお待ちください。
(2022年11月13日)