副院長・鴨下 桂子が不妊治療に関する講演会を母校にて実施しました。
講演内容
多様化している女性の生き方、ライフキャリアを考える上で、妊娠・出産が与える影響を高校生の若いうちから知ってもらうため、2023年10月16日(月)に講演会を実施しました。
従来の性教育で指導されてきた、望まない妊娠を予防することだけにとどまらず、不妊症を主題とし、妊孕性[にんようせい](妊娠できる能力)には個人差があるものの、卵子の老化といった年齢の影響が大きいことにも言及しました。
そして、生理の仕組みや過度なダイエットのリスクを取り上げ、発達段階である高校生が行うべき健康管理について解説しました。
講演のきっかけ
講演会を実施するきっかけとなったのは、鴨下が生殖医療専門医として現場で働く中で、患者さんとの知識の差を感じたことにあります。もちろん、結婚するかしないか、子どもを産むか産まないかを決めるのは、一人ひとりの自由です。しかし、正しい知識を身につけた上で決断することと、無知のまま年齢を重ねることは全く異なります。
鴨下は正しい知識のもと「産まない」ことを選択することと、正しい知識を持たないままいつの間にか「産めない」ことの違いを伝えていく必要性を感じました。そこで母校の恩師へ相談し、講演会の実施にいたり10年以上経過しています。
受講者からの嬉しい反響
一度の講演では、伝えられる数に限りがあるため、継続することに意味があると考えていた鴨下。講演会の様子がNHKで取り上げられたことで、各種教育機関や行政からも講演のオファーを多数いただき活動してきました。また、2014年には『誰も教えてくれなかった卵子の話(集英社)』を出版し、講演会の参加者や読者からは以下のような感想が寄せられました。
- 今回私が学んだことを、もし私に子どもが生まれたら教えていくべきだという義務感を感じました。教育を充分に受ける機会がない環境にいる方々にもこの話を知ってもらえたら、妊娠出産について後悔する人が減ると思いました。(高校生)
- 次から次へとしなければいけない事や目標が迫ってなかなか先のことを考える余裕をもつことは難しいですが、自分自身の未来の姿を常に想像して生きていきたいと思いました。正しい知識を学び続けて、これからも必要のない焦りや不安を抱くことなく多くの選択肢を持っていることを忘れずにしていきたいです。(高校生)
- 引け目を感じることなく、体に異常があれば婦人科を受診して、早く病気を見つけたり、将来の選択肢を狭めない為の行動をしてきたいと強く感じました。(高校生)
- 母がいわゆる高齢出産で私を産んでくれたこと、妊娠を諦めないでいてくれたことを深く感謝することができました。(高校生)
- 妊娠や性の多様化によって、家族の形も増えていくと聞いて私もそのような社会が来るのが楽しみだと思った。(高校生)
ここまで10年以上に渡り、活動を継続して続けてこられたのは、開催の場を提供していただいた母校を始め、活動をサポートしてくださった医療関係者のおかげです。この場をかりて御礼申し上げます。
講演会に対する鴨下の想い
鴨下は、医師として不妊治療と向き合う中で、「正しい知識を持つことで、予防できる不妊症もある」と伝えます。また、不妊症によって女性の人生が大きく変わる場面も幾度となく目にしてきました。
講演会を通じて、不妊に関する知識が普及してきたように感じる一方で、知識を継続的に伝えていく必要性も感じています。そして、男女年齢問わず知識を持ってほしいという思いから、2018年には、『男性も女性も知っておきたい 妊娠・出産のリテラシー(大修館書店)』を共著にて出版しました。しかし、一人の医師が行なっている活動であるが故、社会的なインパクトは小さく、限界を感じているのもまた正直なところ。今後は共感していただける人や行政を巻き込んで広く周知していきたいと言います。
終わりに
はらメディカルクリニックでは、30周年を機に「私たちはすべての妊活を応援しています。」を合言葉に、妊活周知活動を実施しています。その一環として、東京都議会議員後藤なみ氏と鴨下による不妊治療支援制度に関する特別対談記事を公開しているのであわせてご覧ください。
後藤なみ氏、鴨下副院長 特別対談
女性に多様な生き方の選択肢を。不妊治療を支援制度と現場から考える。
https://www.haramedical.or.jp/fight-ninkatsu/talk/01/
鴨下 桂子 プロフィール
はらメディカルクリニック副院長、医学博士
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医。東京医科大学卒2009年-2021年 東京慈恵医科大学産婦人科教室助教
2021年10月 はらメディカルクリニック勤務
2023年6月 はらメディカルクリニック副院長就任
著書「誰も教えてくれなかった卵子の話」