【不妊治療】不育症(流産)の原因と検査方法とその流れ
不妊症の検査・治療
不育症(流産・死産)について
不育症とは
妊娠したものの流産、死産を2回以上繰り返す状態をいいます。
流産とは、妊娠の早い時期(妊娠22週)までにおなかの赤ちゃんが亡くなってしまうことをいい、妊娠22週以降に亡くなった場合を死産といいます。また流産の内、妊娠12週未満のものを「早期流産」、妊娠12週以降22週未満のものを「後期流産」と定義されています。早期流産は流産全体の約90%を締めています。
流産は妊娠の10~20%の頻度で起こり、まれなことではありません。この頻度は女性の加齢とともに増加し40歳代の流産は50%とも言われています。
流産の繰り返しが2回の場合を「反復流産」と呼び、その頻度は2~5%です。そして流産を3回以上繰り返した場合を「習慣流産」と言います。流産は多くの妊娠で見られ、誰にでもおこる病態です。しかし、3回以上繰り返す場合は1%程度の頻度であり、両親に何らかの疾患が隠れていることもあります。
なお、hCGの尿検査や採血検査で妊娠反応は出たものの、子宮の中に赤ちゃんの袋がみえる胎嚢確認前に流産してしまう場合は化学流産といい、現在は不育症の流産回数には含められていません。
不育症の原因
不育症についてはまだ分かっていないことが多く、検査を行っても約半数は原因が特定できないとされます。ですが、不育症の方が検査を行うと、一定以上の頻度で見られる異常があり、「これらの因子があると流産しやすい」という意味で「原因」ではなく「リスク因子」と表現されるものがあります。
厚生労働省 反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアルでは、1回の流産でリスク因子を検査する必要はなく、2~3回以上流産を繰り返す場合にリスク因子の検査を勧めるとしています。
夫婦染色体異常
妊娠初期の流産の原因の大部分(約80%)は胎児(受精卵)に偶発的に発生した染色体異常ですが、流産を繰り返す場合は夫婦どちらかに染色体構造異常がある可能性が高くなります。夫婦とも全く健康ですが、卵子や精子ができる際に染色体に過不足が生じることがあり流産の原因となります。
子宮形態異常
子宮の形によっては着床の生涯になったり、胎児や胎盤が圧迫されたりして流産や早産が起こりやすくなります。
内分泌異常
甲状腺機能異常や糖尿病が流産のリスクを高めるといわれています。
甲状腺で作られる甲状腺ホルモンには新陳代謝の過程を刺激し促進する作用がありますが、そのホルモンが過剰に作られたり、もしくは必要よりも低下した状態であると流産に影響することが考えられます。
糖尿病は、高血糖による胎児染色体異状の増加の関与が指摘されており、流産・死産の増加にかかわっていると考えられます。
凝固異常
抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症、第Ⅻ因子欠乏症などにより血液が固まりやすくなる異常のことです。血液の流れの遅い胎盤の周りには血栓が生じやすく、胎盤内血栓が形成されると、血流不足が生じ胎盤が壊死した状態(胎盤梗塞)となってしまいます。胎児は胎盤を通じて酸素や栄養を受け取っているので、それが妨げられ、赤ちゃんの発育不全や、流産・死産につながることがあります。
母体の高齢
これらのリスク因子とは別に、母体の高年齢は流産のリスクを高めます。女性の卵母細胞の数は胎児期ピーク(約600万~700万個)を迎えその後増加することはありません。そのうち生涯にわたり排卵する卵子は400~500個と全体の1%もありません。卵母細胞は排卵の準備が開始するまでは減数分裂の途中の段階で停止している状態でいます。年齢を重ねるごとに、排卵までの停止期間は長くなり、この長い停止期間が染色体異状の要因の一つとされています。その結果として、受精しにくくなったり妊娠したとしても流産が起こりやすくなるのです。
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【不妊治療】不育症の検査方法と流れ
当院では、良好な胚を複数回移植しても着床しない、あるいは流産するという方のために着床不全外来を設置しております。受診の目安となるのは、良好な胚を2回以上移植しても妊娠が成立しない場合(流産含む)です。また、予防として胚移植をされる前に着床不全の検査を希望することもできます。検査によって問題が見つかった場合はその対処療法を行います。その後、妊娠が成立されると、妊娠8週頃まで当院にて妊娠管理をさせていただき、その後はこれまでの治療歴を記した紹介状をお渡しし、転院先の産院で治療を継続していただきます。
2回以上の流産・死産や、複数回移植しても妊娠娠に至らない方、またこれから体外受精を受ける前に着床系の検査を希望される方は当外来をご予約ください。
【診察と検査の流れ】
1,WEBにて「着床不全外来」をご予約ください。
はじめて当院に通われる方は、こちらから予約サイトの利用登録を行い、案内に沿ってご予約をお願いします。
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2,医師の診察(問診・超音波検査)
既に当院にご通院いただいている方はこれまでの治療歴、はじめてご通院される方は事前にお送りいただく問診票をもとに問診と超音波検査を行います。
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3,検査
以下の検査を行います。すでに他院や当院で行った検査でも、 必要と判断した場合には再度行います。(1回の検査では発見出来ない場合があります)
一次スクリーニング
免疫学的検査 | 抗リン脂質抗体。自分を傷つける抗体反応、血液がかたまりやすくなる | 抗カルジオリピン抗体IgG |
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抗カルジオリピン抗体IgM | ||
抗CL・β2GPⅠ抗体IgG | ||
抗CL・β2GPⅠ抗体IgM | ||
ループスアンチコアグラント | ||
自己免疫検査 | 抗核抗体 | |
凝固系検査 | 血液が固まりやすくなり胚への血液供給が減少する | AT活性 |
凝固第Ⅻ因子 | ||
プロテインS 活性 | ||
プロテインC 活性 | ||
甲状腺検査 | 甲状腺機能異常 | TSH、FT4、FT3 |
子宮の形態 | 子宮内腔直視下検査 | 子宮鏡 |
二次スクリーニング
一次スクリーニングの検査を踏まえて医師の判断により検査項目を判断します。
免疫学的検査 | 抗リン脂質抗体。自分を傷つける抗体反応、血液がかたまりやすくなる | 抗PE抗体IgG |
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抗PE抗体IgM | ||
ネオセルフ抗体 | ||
Th1細胞とTh2細胞の比率を調べる検査 | Th1/Th2比 | |
染色体検査 | 染色体の異常 異常率・男3%女4% |
夫婦染色体 |
慢性子宮内膜炎 | 慢性子宮内膜炎と膣内の炎症の有無を調べる検査 | CD138慢性子宮内膜炎+膣炎検査 |
4,検査結果総括
検査結果がでたら、結果に基づいた治療方針を説明いたします。
5,治療開始
治療例)
- 抗凝固療法(低用量アスピリン)
- ヘパリン療法(ヘパリン注射)
- タクロリムス(プログラフ)
- 子宮内膜ソウハ術
- 経腟的腹腔鏡
- カウンセリング