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不妊治療の現状と成功率 | 成功へ導くためのポイントを紹介

不妊症の検査・治療

不妊治療の現状について

日本産科婦人科学会の調査によると、2018年には全国592施設、合計454,893周期の体外受精が行われ、胚移植1回あたりの妊娠率は31.9%でした。この年の総出生数918,400人のうち体外受精で生まれた子どもは56,979人、つまり16人に1人が体外受精で生まれているということです。その5年前の2013年は体外受精で生まれたこどもは24人に1人の割合であったことと比較すると、体外受精で生まれる子供の割合はかなり増えていることがわかります。これは不妊治療(体外受精)をする人の数が増えたことと、体外受精の技術の進歩により妊娠率が上昇していることが要因と考えられます。

不妊治療の成功率について

下のグラフは日本の成功率の全国平均です。これを見ていただくと、35歳を境に妊娠率の下がり幅が大きくなっており、反対に流産率は上昇していることがわかります。この傾向は10年前から変わっておらず、進歩した治療をもってしても年齢という壁を超えることは出来ないのです。

【不妊治療】年齢とともに成功率が下がる理由

ではなぜ年齢とともに妊娠しづらくなってしまうのでしょうか。
それには「卵子の質の低下」「卵子の数の減少」が関係しています。

卵子の質の低下

卵子は他の細胞とは違い、新しく生まれ変わることはありません。赤ちゃんの時にもっていた卵子は年を重ねるごとに減少し、残った卵子はその分年をとります。卵子は精子と受精するために「減数分裂」という生殖細胞特有の細胞分裂を行いますが、年をとった卵子はこの「減数分裂」を正しくすることができなくなります。正しくない減数分裂を行った年をとった卵子はその後精子と受精しても胚盤胞まで育たなかったり、着床しなかったり、流産したり、あるいは先天性染色体異常を有した児に繋がります。

卵子の数の減少

女性の持つ卵子の数はいつが一番多時期は妊娠5ヶ月、つまりお母さんのお腹の中にいるときに卵母細胞(卵子の元になる細胞)の数はピークを迎えます。このとき約600万~700万個まで増えた卵母細胞は閉経に至るまで継続して減少し、増加することはありません。
生まれてくるころには、約200万個となり排卵が起こり始める思春期頃には30万個まで減少します。その後、37歳で25,000個、閉経を迎えることには約1,000個の細胞となってしまうのです。

年齢を重ねるとともに、卵子も年をとり、数も減ります。近年の生殖医療の高齢化により、体外受精をされる方の年齢が上昇しているため高齢での妊娠例は増えています。しかし、「妊娠数」ではなく「妊娠率」で見た時、高齢での妊娠率は5年前とあまりかわっていません。どんなに生殖医療の技術が進化しても、女性の妊娠に適した時期というのは、卵子の質が正常で、卵子の量が充分あり、ホルモンバランスがよく、卵巣機能が正常な期間、つまり25歳~35歳前後であることに変わりはありません。
なるべく早くにご夫婦で将来の家族計画を話し合い、適切な時期に検査や治療を開始できるよう備えることが大切です。不妊治療は早くはじめて、早く終わらせることが大切です。

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不妊治療を成功へ導くための4つのポイント

早めに検査をしておく

いざ赤ちゃんがほしい、と思ったときにはじめて自分の身体の状態を知るのと、あらかじめ知っているのとでは心構えが違ってきます。
女性であれば月経から次の月経が来るまでの間に必要なホルモンが正常に分泌されているか、正常に排卵が起こっているか、卵巣の予備能はどれぐらいなのか、男性であれば自分の精子が自然妊娠可能な状態なのか、質はどうなのか、を知っておくことで普段の生活の改善や、ライフプランを早めに立てることができます。
不妊症の原因は女性と男性どちらにも考えられ、その割合は半々です。男女ともに将来子どもを望む可能性がある方は、早めの検査をおすすめします。

検査を希望される方はこちら

また、治療を進めていくうえで医師からも様々な検査を提案しますが、自分でも「やってみたい」という検査があれば積極的に医師に相談してください。当院の患者様からのお声にも「気になっていた検査をして問題は見つからなかったけど、『問題はない』ことが分かったので次の治療へ気持ちよく進めることができた」とあるように、不妊症には様々な原因が考えられますので、一つずつ確かめて自分の状態を整理しながら治療を進めるようにしましょう。

適切な時期に治療をステップアップ

不妊治療にはタイミング療法、人工授精、体外受精がありますが、その成功率はタイミング療法≦人工授精<体外受精です。

タイミング療法:妊娠しやすい性行為の時期を指導する方法
人工授精:妊娠しやすい時期に精子を直接子宮内に注入する方法
体外受精:卵子を採って体外で受精させた受精卵を着床しやすい時期に子宮へ戻す方法

なぜかというと、妊娠までには以下のことが必要です。

  1. 精子が子宮に入る
  2. 卵子が排卵される
  3. 卵子が卵管に取り込まれる
  4. 卵子と精子が受精する
  5. 受精した胚が子宮に着床する

人工授精は精子を直接子宮に注入するので①のリスクは回避できますが②~⑤のリスクはタイミング療法と同じく回避できません。しかし体外受精はあらかじめ受精した胚を子宮に戻すので①~④のリスクを回避でき、成功率が高くなるのです。

先述した通り、妊娠する可能性は年齢とともに下がっていきます。自身の年齢と治療の成功率、そして将来の人生設計を鑑みながら、適切な時期に治療をステップアップしていくことが大切です。勇気を出して体外受精へステップアップしたときに年齢という壁に阻まれることがないようにパートナーや医師との相談をしっかり行ってください。

適切な病院選び

日本は世界で最も多くの体外受精をしていますが、世界で最も成功率の低い国です。しかし、実際には成功率が高い施設も多くありますので、施設によるバラつきが大きいという実情があります。日本には世界で最も多い572の体外受精ができる不妊治療施設があります。そのうち、1年間の体外受精周期数が100以下の施設が338箇所と最も多いのです。101~500周期の施設は196箇所、501周期以上の施設は38箇所しかありません。。一概には言えませんが、体外受精の成績を左右する医師や胚培養士の技術は最低でも年間500周期以上、できれば1000周期以上の実施をする中で熟練され、それを保持できるのではないでしょうか。

治療周期実施施設数
1~1077
11~50161
51~100100
101~15080
151~20040
201~30048
301~40018
401~50010
501~6007
601~70011
701~8005
801~9004
901~10002
1001~20007
2001~30001
3001以上1
合計572
(日産婦誌72巻10号より)

また、各施設ごとの掲げる治療方針が自分に合うかどうかも重要です。「仕事との両立をしたい」「なるべく早くに成果を出したい」「身体への負担は少なくしたい」などご自身の希望と施設の治療方針が合致しているところを選びましょう。治療方針は各施設の説明会に参加したり、ホームぺージなどで知ることができると思います。

同じやり方を繰り返さない

2回以上胚移植をしても妊娠が成立しない場合は、反復不成功例になります。この時に「原因追及」と「妊娠率を高める処置」をしましょう。

原因追及

  1. 免疫異常は採血で確認できるのでまず最初に検討しましょう。抗リン脂質抗体、自己免疫検査、凝固系検査、代謝検査、血中ビタミンDと亜鉛を調べましょう。もし、胎嚢確認後の流産を経験している場合にはこれに加えて、Th1細胞とTh2細胞の比率を調べる検査も有効です。また、場合によって夫婦の染色体検査も実施した方が良い場合もあります。
  2. 子宮内の物理的な問題をクリアーするために子宮鏡検査をしましょう。胚移植周期に子宮鏡検査をする場合は同時に子宮内膜スクラッチもすることで妊娠率を高められる場合があります。
  3. 子宮内膜の深いところで炎症が起こりそれが着床を阻害していることがあります。反復不成功の場合は子宮内膜を採取した組織検査、CD138慢性子宮内膜炎やALICE検査を検討しましょう。
  4. 胚移植を3回以上行ってもhCGが10以下の場合には胚移植のタイミングとあなたの子宮内膜の着床受容期がずれているのかもしれません。ERA検査を検討してください。

妊娠率を高める処置

以下は当院で行っている妊娠率を高める処置です。実施した場合の妊娠率の変化は2020年のデータです。

まとめ

  • 体外受精で生まれる子供の割合は年々増加し2018年で16人に1人が体外受精にて誕生した子供です。
  • 日本は施設による成功率のバラつきが大きな国です。施設選ぶ時は、自分に合った治療ができるような豊富な治療があるか、採卵や胚移植の実績数は多いかを検討しましょう。
  • 年齢とともに妊娠率は低下します。適切なタイミングでステップアップをしましょう。
  • 胚移植不成功が2回以上ある場合、同じ方法を繰り返さないように原因追及と妊娠率を上げるための方法を検討しましょう。
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