排卵誘発方法について
不妊症の検査・治療
排卵誘発法には、「完全自然排卵周期法」「低刺激」「中刺激」「高刺激」などがあります。
排卵誘発剤を
使用しない方法セキソビット
クロミッド
フェマーラなどの経口剤クロミッド+hMG
クロミッド+rFSHロング法
ショート法
アンタゴニスト法
完全自然 | 低刺激 | 中刺激 | 高刺激 | |
---|---|---|---|---|
採卵あたりの 妊娠率を 高めたい | △ | △ | ◎ | ◎ |
体に優しい | ◎ | ◎ | ○ | △ |
自然 | ◎ | ◎ | ○ | △ |
- 下垂体ホルモン(FSH・LH)
- 卵巣ホルモン(E2・P4)
- ご年齢
- 精子状態
- 過去の不成功例
などをもとに、あなたに合った治療を選択します。当院ではオーダーメイド不妊治療が可能であり、多くの排卵誘発方法があります。大別すると以下の12種類に分けられます。
① 完全自然排卵周期法
排卵誘発剤を一切使用しない方法
良い点
- 通院回数が少ない
- 排卵誘発剤やhMG/rFSH注射を使用しないため体への負担が少ない
- 連続周期採卵が可能
考慮すべき点
- 不成功の度に、採卵から行うため、採卵回数が多く必要になる
- 採取卵は1つのため、胚盤胞まで達成できず移植キャンセルになる可能性が他の方法より高い
- 育った卵胞が空胞で卵子が回収出来ない可能性がある
自然周期に向いている人は?
- 41~43歳以上の方
- 前胞状卵胞(アントラルフォリクル)が3個以下もしくはAMHが6.4以下など低値の方
- FSHが20以上など高値の方
費用は?
採取卵数が1個で余剰卵凍結費用も不要のため、採卵から胚移植までの1サイクル当たりの費用は最も低くなる。
スケジュール自然排卵周期(自然排卵周期)
② クロミフェン法(経口薬)
低刺激
クロミフェンを生理開始3日目より服用。服用開始日を遅らせると卵胞の選択が生じ発育卵胞数が減少するなど。採取卵胞数を多少調整可能な場合もある。
良い点
- 経口薬のため通院回数が少ない
- 刺激量が少ない
- 連続周期採卵が可能
- PCOの第一選択方法
考慮すべき点
クロミフェン採卵の場合、内膜発育不全を起こす場合がある為、採取卵は新鮮胚移植せず、全て凍結し、翌周期以降の内膜状態の良い周期に凍結融解胚移植することが多い。
クロミフェン法に向いている人は?
- なるべく自然な方法を希望するが、完全自然排卵周期法では卵胞成長が認められない方
- 卵巣の機能が低下している方(FSH高値、AMH低下、前胞状卵胞=アントラルフォリクルが3個以下など)
費用は?
採取卵数が少なく、余剰卵も少ないため、採卵から胚移植までの1サイクル当たりの費用は低めである。
しかし、採卵数が少ない=余剰卵も少ないため不成功を反復した際は採卵から実施することになり、2~3サイクル当たりの費用は高めになる。
参考:クロミフェン法での採取卵数の目安
31歳未満 | 3個~5個程度 |
---|---|
31~35歳未満 | 2個~4個程度 |
35~38歳未満 | 1個~3個程度 |
38歳以上 | 1個~2個程度 |
スケジュール(クロミフェン法)
③ hMG/rFSH(注射)
低刺激から高刺激まで調整可能
hMG/rFSHの排卵誘発剤を生理開始3日目から投与。投与する注射の種類は数種類あり、その種類や注射の単位量は個人により異なる。投与量を調整することで採卵数をコントロールでき、クロミフェンを使用しないため子宮内膜への影響はない。
良い点
- クロミフェンが使用できない場合有効
- 投与量の調整により発育卵胞数をコントロールしやすい
- 卵数の成熟がより確実であるため、卵胞成長が遅い方に適切
考慮すべき点
- 注射の日数分だけ通院が必要になる
(自己注射により注射通院不要) - 卵巣過剰刺激症候群など副作用が起こる場合がある
- 早期排卵で採卵キャンセルになる場合がある
hMG/rFSH(注射)に向いている人は?
- クロミフェンが使用できない方
- 希望採卵数が多めの方
費用は?
採取卵数に応じた費用になるため、少なく採卵した場合は1サイクル当たりの費用は低く、2~3サイクル当たりの費用は高めである。逆に、多く採卵した場合は1サイクル当たりの費用は高めだが、数多くの胚凍結が出来るために数サイクル当たりの費用は低くなる。
参考:hMG/rFSH法での採取卵数の目安
31歳未満 | 4個~10個程度※ |
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31~35歳未満 | 3個~8個程度※ |
35~38歳未満 | 2個~6個程度※ |
38歳以上 | 1個~5個程度※ |
スケジュール(hMG/rFSH法)
④ クロミフェン+hMG/rFSH法(経口薬+注射)
中刺激から高刺激まで調整可能
クロミフェンを生理開始3日目より服用。服用開始日を遅らせると卵胞の選択が生じ発育卵胞数が減少するなど。採取卵胞数を多少調整可能な場合もある。
良い点
- クロミフェンの利点、hMG/rFSHの利点を使い分けることができる
- 投与のタイミング、種類、単位量を変えることでバリエーションが多彩
- 中刺激による採卵数が最も多く、費用対効果が最も高い
- 卵巣予備機能はあるが、卵巣反応が弱く、卵胞発育が遅い場合適切である
考慮すべき点
- 注射の回数分だけ通院が必要になる
(自己注射により注射通院不要) - 卵巣過剰刺激症候群など副作用が起こる場合がある
- 早期排卵で採卵キャンセルになる場合がある
- 採取卵数が10以上と多い場合、卵の質が低下することがある
クロミフェン+hMG/rFSH(注射)に向いている人は?
- はじめて採卵する方―中刺激
- 過去の採卵で未成熟卵が多い方―中刺激
- なるべく多く採卵したい方(採卵希望数に応じて注射量を調節します)―高刺激
- パートナーが重度な男性不妊の方―中刺激(精子要因による受精率、胚盤胞達成率が低いため)
費用は?
採取卵数に応じた費用計算により、採取卵数が少ない場合は1サイクル当たりの費用は低く、数サイクル当たりの費用は高めになる。逆に、採取卵数が多い場合は1サイクル当たりの費用は高めだが、その分多くの胚凍結が出来るため数サイクル当たりの費用は安くなる。
参考:クロミフェン+hMG/rFSH法での採取卵数の目安
31歳未満 | 5個~13個程度※ |
---|---|
31~35歳未満 | 4個~9個程度※ |
35~38歳未満 | 2個~7個程度※ |
38歳以上 | 1個~5個程度※ |
スケジュール(クロミフェン+hMG/rFSH法)
⑤ GnRHアゴニスト併用(アゴニスト製剤点鼻薬併用)
ロング法(ウルトラロング法)
高刺激
ロング法は、採卵を行う予定周期の前周期高温期中頃より採卵前までGnRHアゴニスト製剤点鼻薬を使用する。下垂体のdown regulation(脱感差)を引き起こすことにより、prematureLHを抑制し、また、新たに発育する卵を均一化するという利点もある。
ウルトラロング法とは、採卵を行う予定周期の前周期低温期より採卵まで、ロング法より長い期間アゴニスト製剤点鼻薬を使用する。完全にFSH・LHの分泌を抑え込むことが目的である。
良い点
- 採卵のスケジュールコントロールが最もしやすいため、採卵可能日が限定的である場合有効
- prematureLH体質(卵胞が成熟する前にLH分泌を開始してしまう)の場合、卵胞の質向上が見込める
- FSHが高く(20以上)ピルを連続周期服用しても改善が見込めない場合に通常より長期間アゴニスト製剤 点鼻薬を使用することでFSHを抑えることが可能
考慮すべき点
- 排卵を抑制(LHを抑制)するため、卵胞成長に必要なFSHも抑制の影響を受けてしまい、その分排卵誘発剤の使用量が多めとなる。また、その分だけ費用負担も上がり、来院数も多めである
- 高刺激による卵巣過剰刺激症候群になる可能性が他の方法より高い
- アゴニストの量が増え卵胞の成熟が遅れる傾向にある
- 下垂体回復まで時間がかかる
ロング法に向いている人は?
- 採卵日の事前特定を最優先される方
- prematureLH体質の方で卵巣機能が高い方
- 前胞状卵胞(アントラルフォリクル)が7個以上、AMHが正常値ある方
費用は?
注射量が多く、また点鼻薬が追加で必要となるため、費用負担が高い。
スケジュール(GnRHアゴニストロング法)
⑥ GnRHアゴニスト併用(アゴニスト製剤点鼻薬併用)ショート法
中刺激
GnRHアゴニストを使用すると、投与初期には性腺刺激ホルモンが大量に分泌される。ショート法はその現象を利用して卵胞を短時間で育てる。期間が短いため、薬の量が少なく済む半面、黄体化ホルモンの大量分泌により、卵胞の質が悪くなる場合もある。
良い点
- ホルモンの大量分泌が期待出来る
- 誘発量の使用量が減らせる
考慮すべき点
- ホルモンの大量分泌による悪影響が考えられる
- 効果が事前に予測しにくい
- 下垂体回復まで時間がかかる
ショート法に向いている人は?
- クロミフェン法より多くの採取卵数を希望するが、通院できず、自己注射も不可能な方
費用は?
アゴニスト製剤点鼻薬分追加される。(GnRHアゴニストロング法・ショート法での採取卵数の目安は、個人差が大きいため医師までご相談ください。)
スケジュール(GnRHアゴニストショート法)
⑦ GnRHアンタゴニスト法(セトロタイド注射・ガニレスト注射併用)
中刺激から高刺激
複数の成熟卵胞を得るためにhMG/rFSH注射による排卵誘発を行うが、刺激に伴い早期にprematureLHが起こると、採卵前に排卵してしまったり、卵の質が低下してしまう。このprematureLHを防ぐためGnRHアンタゴニストを併用する。
良い点
- 排卵コントロールが比較的可能なため採卵日を調整し易い
- prematureLH体質(卵胞が成熟する前にLH分泌を開始してしまう)の場合、卵胞の質向上が見込める
- ロング法と比較して誘発剤の使用量が少ないため、卵巣過剰刺激症候群になりにくい
- 排卵を抑えつつ卵胞発育を望めるため、発育卵胞数が多くても排卵リスクなく卵胞の発育を待つことができる
考慮すべき点
- ロング法と比較すると、スケジュールコントロール性は低い
- どの程度の排卵抑制がかかるか、個人差が大きいため、併用後の卵胞確認が多めに必要になることから比較的通院数が多めになる
- 予想以上に排卵抑制がかかり、卵胞が未成熟になる可能性がある
- 費用負担が高め
GnRHアンタゴニストに向いている人は?
- prematureLH体質の方、恒常的に高LHの方
- PCOでOHSSの既往がある方
- 他の方法で反復不成功例がある方
費用は?
同じく排卵抑制を目的とするロング法と比較すると、注射量は少なくその分排卵誘発としての費用は下がるが、セトロタイドやガニレストというアンタゴニスト注射薬が高額である。最終的にはロング法よりやや低めになる程度。
参考:GnRHアンタゴニスト法での採取卵数の目安
31歳未満 | 4個~10個程度戸※ |
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31~35歳未満 | 3個~8個程度※ |
35~38歳未満 | 個人差大 |
38歳以上 | 個人差大 |
スケジュール(GnRHアンタゴニスト法)
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